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観光業者がバス運行、限界集落の交通手段に(山梨・昇仙峡)

昇仙峡地域でバス運行を 始める村松資夫社長
昇仙峡地域でバス運行を
始める村松資夫社長

 山梨県甲府市北部の奥昇仙峡・黒平地区とその周辺で4月から、地元の観光業者による循環乗合バスの運行が始まる。同地域はシーズンには観光客でにぎわう一方、利用者の減少を背景に、冬季の路線バス運行が約2年前から一部区間で廃止。車を持たない高齢者などの地域住民や観光客などから、交通手段の利便性向上を求める声が上がっていたという。

 これを受け、昇仙峡で観光施設などを経営する「さわらびグループ」の村松資夫社長が一昨年、バス運行会社「昇仙峡渓谷オムニバス」を設立。住民など利用者からの電話予約を受け、バスを運行させる。高齢化や過疎化により社会的な生活インフラの維持が困難となる“限界集落”地域の交通手段を支える、新たなモデルケースとしても注目が集まっている。

 バスの運行ルートは、県営グリーンライン駐車場を起点に、北部の金櫻神社や荒川ダム駐車場などを結ぶ。冬季(12―3月)には、路線バスが運休となる南部の千代田小学校方面にも立ち寄る。14人乗りのマイクロバス(車種NV350)4台体制で対応し、専用の運転手も雇用する。乗車料は1区間当たり300円、4枚綴りのチケット利用で250円。

 ただ、ほぼ実費という乗車料収入だけでは事業の継続は難しく、村松社長は「市の地域公共交通会議の場でも、収支に対する声が多かった」と話す。そこで考えたのが、観光客にもバスを利用してもらう仕組み作りだ。

 昇仙峡は秩父多摩甲斐国立公園にあり、新緑の時期など、渓流沿いでハイキングを楽しむ観光客が多く訪れる。バスの利用料は同じく1区間300円、チケット利用で250円に設定。村松社長は「バスだからこそ行ける、黄金色の桜が咲く金櫻神社や紅葉や新緑がすばらしい野猿谷、秘境といわれる板敷渓谷など、まだあまり知られていないスポットにも案内できる」といい、徒歩でまわる散策コースにバスを組み合わせた、周遊観光の提案を目指す。

 バス運営費用の直接支援も募る。1口1万円で、支援者には御礼として、地元住民が作ったマタタビ酒や日本蜂蜜、新鮮な山菜、刺身こんにゃくなど季節の品が送られる。村松社長は「高齢者が多い地域住民の仕事の支援にもつなげていきたい」とし、「バスの運行が昇仙峡の新しい魅力を知ってもらう一つのきっかけになれば」と話す。

 問い合わせ=電話:055(251)8899。

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