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お客同士のトラブル ― 不利な客への配慮がなおざりに

2016年3月1日
編集部

 毎日通勤電車に乗っていると、「今朝方、お客様同士のトラブルが発生したため、この電車は現在○○分遅れています」などといった車内アナウンスをよく聞く。

 ああ、また背中を押したとか肘が当たったとかの言い争いかしらん? イヤフォンから漏れる音を注意したら逆切れしたのかな? それとも痴漢騒動か!?……などと思いを巡らす。しかし、原因は何であれ、車掌さんの声のトーンに微かではあるが、「客同士のイザコザなので、私たちに全面的な非はない」という言い訳じみたニュアンスが、少しだけ気になる。

 電車には数百人の乗客が乗っている。車内アナウンスで「携帯電話の通話はご遠慮ください」などの注意喚起を行っているが、基本的に車内マナーは客側のモラルに任されている。乗客にとってもA地点からB地点に安く、遅れることなく到着することが電車を利用する主な目的なので、車内の環境が多少悪くても我慢するしかないし、我慢できなければ客同士が注意し合うしかない。また、新幹線の自由席に行くと、混み合って座れない人がいるのに、あえて隣の席に荷物を置いて座らせないようにする人を見かけるが、こちらも基本的に車内アナウンスのみの注意喚起で乗客のモラルに任されており、不利な客への配慮は、ほとんどなおざりである。一方、タクシーを利用すれば、マンツーマンのサービスであるから、乗客同士のトラブルは発生しない。

 お客同士のトラブルは、あらゆる場所で生じる。たとえば、寿司屋のカウンターや、レストランなどでは、喫煙者と、煙草を吸わない客は相容れない。旅館やホテルでは、隣の部屋の客が夜遅くまで騒いで眠れないなどのクレームが多い。

 あるとき、国際線で最大限シートを後方に倒している乗客がいた。機内食の時間になり、キャビンアテンダントが食事の提供を始めたが、リクライニングシートを倒した前の客は機内食を拒否して寝続けたかったのだろうが、キャビンアテンダントは「後ろの席のお客様は食事をされますので、シートを元の位置にお願いします」と前方の客に声を掛けていた。これと同じような状況を別の航空会社に乗っているときに遭遇したが、キャビンアテンダントはシートを傾けた前方の乗客に気づきながら、声を掛けることもなく素通りした。後ろの客は仕方なく前の乗客のシートを叩いて「少し前に戻してください」と、申し訳なさそうにお願いしていた。航空会社はこのようなケースの対応は、個々のスタッフの判断に委ねているのだろうか。

 

 ホテルなどサービス業の場合、客に対するスタッフの比率が高いほど格付けが上っていくという。スタッフはより少人数のお客の素振りに集中できるし、お客にとっては自分の要望がダイレクトに伝えやすいため、不要な客同士のトラブルも回避しやすい。しかし、私がよく利用する場末の安食堂では、ホールにおばちゃんが2人ほど手持無沙汰に立っているが、コップの水がなくなっても何もしてくれない。「水を下さい」と言うと、ようやくピッチャーを探し出し、別のテーブルで見つけたピッチャーも空だと気づき、奥に取りに行くといった塩梅だ。多くの接客の現場は少し意識を変えるだけで、大きく改善するのになぁと、感じる日々である。

(編集長・増田 剛)

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