奥出雲多根自然博物館で出張レストラン、「恐竜カレーセット」好評、松江栄養調理製菓専門学校
2024年11月8日(金)配信
島根県松江市の松江栄養調理製菓専門学校(上田恭己理事長/校長)は10月24日(木)、同県・奥出雲町の奥出雲多根自然博物館(宇田川和義館長)とのコラボレーション企画として、博物館内にあるレストランで、「1日限定出張レストラン」を開いた。
同校調理師科の学生が、博物館に展示されている恐竜の化石などから着想を得て、奥出雲の食材を使用したランチメニュー「恐竜カレーセット」を考案。予約を受け付けた博物館によると、限定40食が埋まったあとも問い合わせがあり、想定以上の反響だったという。
当日は学生10人が業務を分担し、奥出雲のブランド米・仁多米を使用し火山に見立てた「ボルケーノカレー」、オニオンフライとうずら卵で恐竜の巣を表現した「ジュラシックサラダ」、そば粉の恐竜クッキーなどデザート3種盛り合わせ、コーヒーを1000円で提供した。訪れた客はスマホで料理を撮影するなど楽しみながら、舌鼓を打った。
同校は学生の学びの一環として、普段から松江市を中心に地域に根差した活動を積極的に行い、地元食材を使った料理の考案や地域の人々に向けてのレストラン運営などに取り組んでいる。
今回は博物館側からの依頼に応じ、奥出雲町の食を通したフードコミュニティの形成により地域交流活発化の一助になるとの思いから出張レストランを開いた。
同校の上田理事長に話しを聞いた。
――出張レストランの実施は学生たちにどのような意味がありますか。
山陰地方に居住する学生といえども、「奥出雲」という「地域」を知らない学生も少なからず存在しています。まずは、「地域を知る」ことから始めるというのが原点です。地域について学び、その地域の食材を知り、食材に感謝の念を持ち「調理」をすること。まさに「地産地消」・「身土不二」につながるものと信じています。さらに言えば、地域を愛する気持ちを持ち、回帰する素地を産むこともここから始まるものと期待しています。
――普段から地域に根差した活動を心がけている理由を教えてください。
地域社会を構成する一部としての「学校」は独立独歩で成立するものではありません。地域の皆さんとの「交流」を第一に掲げることは「共生」の観点からも当然のことだと思っております。しかしながら、「総論賛成各論反対」は世の常でもあります。正直なところ、今回の取り組み(出張レストラン)は構想から2年かかって実現しました。時間の問題、コストの問題、そしてなによりも「熱意」の問題など、さまざまな問題を乗り越えなければなりませんでした。今後とも、地域に根ざした活動を基本とすることにより、地元就職を考える一つのきっかけとなることを願っています。また、卒業後県外へ就職した後も、いつかは地域に戻りたいと思わせる「記憶メモリー」を植え付ける(今回のような)授業が数多く実施できればと思っています。
――地方の食文化や食材が注目される時代です。
観光業界との連携を深めています。昨年度より、選択コースの1つとして「食とツーリズム」コースを設置しました。設置の目的は、地元の「観光」への関心を深めることと、そして観光の1つの目的である「食」を担う人材として何が求められているかを知ることなどです。学生本人の興味関心を喚起し、主体的に観光産業へキャリアを進めてもらいたいのが本音ではあります。
人材不足がさまざまな業種で叫ばれるなか、調理業界における人材確保は生命線ともいえる課題であります。企業の社長様にお願いしているのは「会社・本人・学校、それぞれがウィン・ウィン・ウィン」の関係となれる「三方良し」の体制をみんなで組めるかがポイントであることです。価値観の多様化が加速度的に進む昨今の日本社会において、「人材」育成は急務であると考えています。