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「テロ遭遇時の旅行会社の対応」など探る、常態化するテロのリスクを下げる(JATA)

(左から)中原氏、矢嶋氏、山下氏、大西氏
(左から)中原氏、矢嶋氏、山下氏、大西氏

 日本旅行業協会(JATA)は3月18日、東京都内で㈱ジャタ、日本アイラックと「重大事故支援システムセミナー」を開いた。「パリ同時多発テロ後の国際情勢とISの動向を踏まえ、旅行会社の緊急対応を考える」をテーマに、JATA団体保険の存在や、リスクマネジメント意識を高める必要性を求めた。22日にはベルギーで同時多発テロが発生、今後常態化するテロのリスクや脅威を知りながら、リスクを下げる情報管理と安全対策が信頼をかち得ることになるという。
【増田 剛】

菅原出氏
菅原出氏

 セミナーの冒頭、JATAの越智良典理事・事務局長は「フランスのテロなど世界各地でさまざまな事件が起きるたびに、逆に旅行会社の役割が求められる」とし、「インターネット時代には一般のお客様とは違う、プロの旅行会社として情報を管理し(1)企画力(2)斡旋力(3)安全対策――を磨いて高めていかなければ旅行会社は生き残れない。テロのリスクはどこでもあるが、より治安のよいホテルを選んだり、事前に危険な日や場所の情報を得ることによって、リスクを下げ、乗り越えていくことはできる」と語った。

 講演会には、国際政治アナリスト・危機管理コンサルタントの菅原出氏が登壇。ISの動向など歴史的な経緯から説明しながら、「無差別テロの実行犯は命がけ。命乞いをしても意味がなく、とにかく犯人から遠ざかるしかない」とアドバイス。さらに「米国主導の有志連合による対IS作戦により、シリア・イラクのIS支配地域は大幅に縮小しており、『本丸』は劣勢。一方で本丸に渡航した外国人戦闘員を出身国に帰還させてテロを起こさせる傾向が強まっており、『帰還兵』の脅威は『ホームグローン』よりもはるかに高い。先進国においてパリ同時多発テロのような大規模テロが起こる可能性は十分にあり、テロのリスクは今後常態化する」と語った。そのうえで「インパクトは大きいが、交通事故に比べてもテロに遭う比率は小さく過剰に恐がる必要はない。ただ、テロの脅威やリスクを認識しておくことが大事」と述べ、旅行会社には「『移民が多いエリアや治安の悪いホテルは選んでいません』『事前調査で安全な経路を選んでいます』などの対策やセキュリティ基準などを示すことが信頼につながる」と強調した。

 パネルディスカッションでは、日本アイラック部長の山下寿人氏、東京海上日動火災保険課長の中原隆氏、JATA広報室長の矢嶋敏朗氏が登壇。モデレーターは(株)ジャタ社長の大西誠氏が務めた。

 山下氏は緊急事故への社内の準備として「重大事故発生後、マスコミが勝手に事務所に入って来て書類を持ち出したり、海外からの電話に録音機を押し付けてきたりするのを防ぐために、オフィスに入って来ないよう徹底する必要がある」と指摘した。

 保険会社からのアドバイスとして中原氏は、海外旅行中の病気や怪我による病院搬送などで2千万円ほどかかった事例も発生しており、「ツアーを企画・手配した旅行会社で海外旅行保険に入ってもらうと、お客様だけでなく自社を守ることにもなる。仮に加入されなくても、少なくともお客様に保険を勧めたという履歴は残しておいた方がいい」と述べた。

 矢嶋氏は「JATA広報委員会で緊急時対応マニュアルを作成し、ホームページにも掲載しているが、7月ごろに同マニュアルの説明会を予定している」と報告した。

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