【精神性の高い旅~巡礼・あなただけの心の旅〈道〉100選】-その45-四万温泉・日向見薬師堂&薬王寺巡礼(群馬県・中之条町) 世のちり洗う四万温泉 心身の健康回復へ祈りの寺院
2025年1月2日(木) 配信
今回の旅先は「四万の病を癒す霊泉」と呼ばれたことから、その名が付いたという群馬県の北西部にある四万温泉。国民保養温泉地の第1号にも指定されました。四万温泉の歴史は古く、その起源は1000年以上に遡ります。
伝説によりますと、源頼光の家臣であった碓井貞光は、この地で読経をしていました。すると、どこからともなく子供が出てきて「あなたの読経の真心に感心し、四万(よんまん)の病気を治す霊泉を与えよう」と告げました。これは、神様のお告げでした。夢うつつでお告げを聞いた貞光が目を覚ますと、そこに温泉が湧き出ていたと伝えられています。また、征夷大将軍であった坂上田村麻呂が入浴したとも伝えられています。
四万温泉は、四方を標高1000㍍超える山々に囲まれているので、訪れるだけで安心感に包まれます。泉質はナトリウム・カルシウム・塩化物・硫酸塩泉。なかでも、硫酸塩泉は皮膚病や創傷、神経痛、胃腸病などに効果的とのこと。
江戸時代には、酸性泉である草津温泉で湯治をしたあと、四万温泉に寄り、肌を癒す湯治客も多かったといわれています。温泉街を流れる四万川の「水」のチカラが、よりいっそう私たちのココロとカラダを潤してくれるでしょう。レトロな温泉街を歩いていると、群馬県民の方々におなじみの上毛かるたの「よ」の札でおなじみの「世のちり洗う四万温泉」の札の看板に出会います。「世のちり洗う」とは、「浮世の憂さまで洗い流してくれる」という四万温泉を表現した言葉です。
そんなレトロな温泉街でもぜひ訪れていただきたいのが、慶雲橋のたもとに建つ旅館「積善館」は、江戸時代の1694(元禄7)年に創業。長時間滞在して病気の治療や療養をするため、多くの湯治客が訪れたそうです。
現存する日本最古の湯宿建築として知られている、老舗のお宿。ジブリ映画の「千と千尋の神隠し」の湯屋のモデルなのではと、フアンの間でも噂の素敵なお宿です。フォトスポットとしても最適であり、カフェや薬膳料理もいただけるお店も中にあり、ココロもカラダもほっこりします。
さて、精神性の旅先のまず1番目は、四万温泉のなかで最も古い日向見地区にある「日向見薬師堂」があります。その隣には「御夢想(ごむそう)の湯」という、夢から覚めた貞光が発見した温泉。日向見薬師堂も、貞光が建てました。薬師堂にお祀りされているのは、「薬師瑠璃光如来」。なかなか治癒しない病を癒し、苦しみから救ってくれるありがたい仏様のようです。
かつて湯治客は、薬師堂の前にある「お籠堂」に泊まり込み、病の治癒祈願をしました。
また、日向見薬師堂からすぐ近くにある「薬王寺」。その薬王寺の隣にある「つるや」というお宿は、以前は「鶴の坊」であり、1965(昭和40)年に薬王寺の宿坊として誕生。薬王寺は法華宗の寺院であり、「ご利益めぐり」をされると良いそうです。
この寺院は、眼病や中風(脳疾患)除けにご利益があるとされています。ご利益めぐりは、まずお参りに来られた方は、本堂にいらっしゃる薬王寺の守護神である薬王大菩薩にお参りください。その後、青麻大権現がお祀りされている石塔を撫でることにより、カラダに力を授けてくれるようです。
青麻大権現は、中風除け、眼病の神様として知られていました。はるか昔に、青麻大権現が四万温泉の中風、眼病に悩める村人を救ったことから、この地で中風除け、眼病の神様として崇められてきました。終わりに、この地に湧き出る薬王水を服すことにより、身体の健康回復のご利益をいただけるとのこと。
交通アクセスは、JR吾妻線・中之条駅からバスで約40分。
■旅人・執筆 石井 亜由美
カラーセラピスト&心の旅研究家。和歌山大学、東洋大学国際観光学部講師を歴任。グリーフセラピー(悲しみのケア)や巡礼、色彩心理学などを研究。