【2025年年頭所感・中野洋昌国土交通大臣】訪日客6000万人・消費額15兆円に向け全力で取り組む
2025年1月6日(月) 配信
国土交通省の中野洋昌大臣は1月1日(水)、2025年の年頭所感を発表した。内容は以下の通り(抜粋)。
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昨年は、元日の能登半島地震、その被災地を襲った9月の豪雨災害をはじめ、各地で大規模な災害が相次ぎました。改めて、こうした災害により亡くなられた方々の御冥福を心からお祈りするとともに、被災されたすべての方々にお見舞いを申し上げます。
私も能登や東北の現場を視察するなかで、改めて被害の甚大さを確認し、災害への備えや早期の復旧・復興の必要性を痛感いたしました。こうした教訓を踏まえ、今後も、防災・減災、国土強靱化を強力に推進して参ります。加えて、運輸分野や通学路などの安全対策、海上保安能力の強化などを通じて、国民の安全・安心を確保して参ります。
また、デフレからの脱却を確実なものとするため、我が国の成長力を高めるべく、戦略的な社会資本整備や地域間のネットワーク強化、さまざまな産業分野における担い手の確保、GX・DXの推進などに取り組んで参ります。
併せて、各地域がその特徴を生かしつつ、持続可能であり続けられるよう、「地方創生2.0」の旗のもと、地方への人の流れを拡大し、地域雇用や経済を拡大するとともに、公共交通など暮らしに必要なサービスの維持に努めて参ります。
国土交通行政は、国民の命と暮らしを守り、我が国の経済や地域の生活・なりわいに直結しています。私自身、国土交通大臣として、現場の声によく耳を傾け、国民のみなさまのニーズにしっかり応えられるよう、全力で任務に取り組んで参る所存です。
本年も、引き続き、国民の安全・安心の確保、持続的な経済成長の実現、地方創生2.0の推進を柱に、諸課題に全力で取り組んで参ります。
□大阪・関西万博、国際園芸博覧会に向けた取り組み
本年4月から大阪・関西万博が開催されます。空飛ぶクルマや自動運転の実現のほか、万博を契機とした地方への誘客促進に取り組むとともに、安心安全な開催に向け、円滑な輸送の確保や海上警備を含むセキュリティ対策に万全を期して参ります。
神奈川県横浜市で開催する2027年国際園芸博覧会は、今年3月に開幕2年前となります。気候変動などの地球規模の課題解決にも貢献するグリーンな国際博覧会となるよう、引き続き博覧会協会、関係省庁、地元自治体及び経済界と連携し、万全の準備を進めて参ります。
□持続可能な観光の推進
観光は、人口減少が進む我が国にとって成長戦略の柱、地域活性化の切り札です。昨年は、訪日需要の高まりや、円安などの影響に加え、持続可能な観光立国の推進に向けて政府を挙げて取り組んだ結果、訪日外国人旅行者数や消費額の回復が急速に進み、観光は力強い成長軌道に乗っているものと受け止めております。2023年に策定した観光立国推進基本計画を踏まえて、本年も「持続可能な観光地域づくり」「地方を中心としたインバウンド誘客」「国内交流拡大」の3つの分野の取り組みを強力に推進していきます。
第1に、持続可能な観光地域づくりです。いわゆるオーバーツーリズムの懸念も生じているなか、観光客の受け入れと住民の生活の質の確保の両立がはかられるよう、地域の実情に応じた取り組みを引き続きしっかりと支援して参ります。
また、観光産業においては、観光需要の回復に伴い人手不足が深刻化していることから、外国人材の活用も含めた採用活動支援や、業務の効率化・省力化に資する設備投資への支援などの総合的な人手不足対策を実施し、人手不足の解消に向けて、しっかりと取り組んで参ります。
さらに、宿泊施設などの改修支援や観光DXの推進などを通じて、観光産業の収益力を強化し、従業員の待遇改善などをはかることで、観光産業の高付加価値化を可能とする好循環を生み出して参ります。
第2に、地方を中心としたインバウンド誘客です。訪日外国人旅行者数は着実に回復していますが、三大都市圏にインバウンドの宿泊全体の約7割が集中するなど、コロナ前と比べても都市部を中心とした一部地域への偏在傾向が見られます。今後、地方部への誘客をより一層強力に推進するため、地域の多様な観光資源を生かした体験コンテンツの磨き上げに取り組んで参ります。
また、高付加価値旅行者の地方への誘客を強化するため、全国14のモデル観光地における高付加価値なインバウンド観光地づくりの取り組みを集中的に支援するとともに、その成果やノウハウを他の地域へも伝播させ、観光を通じた地域活性化を促進して参ります。
さらに、大阪・関西万博開催を契機としたインバウンドの全国への誘客促進に向け、情報発信などに取り組むとともに、若者をはじめとしたアウトバウンドの促進など、双方向交流の拡大にも取り組んで参ります。
第3に、国内交流拡大です。地域の観光資源を一層魅力的なものに磨き上げるとともに、テレワークを活用したワーケーションの推進や、反復継続した来訪の促進、ユニバーサルツーリズムといった国内における新たな交流市場の開拓に、従来の取り組みをさらに進化させて取り組んで参ります。
国土交通省としては、こうした取り組みを着実に進め、2030年訪日外国人旅行者数6000万人、消費額15兆円という目標の達成に向けて、全力で取り組んで参ります。
□各分野における観光関係施策
昨年、我が国へのクルーズ船の寄港回数は、コロナ前ピークの約8割まで回復いたしました。また、寄港するクルーズ船の大型化が進む一方で、小型のクルーズ船が全国津々浦々へ寄港するなど、船型や寄港地が多様化して参りました。今後とも、各地域の皆様と連携し、多様なクルーズ船の受入環境整備や寄港促進に向けた取り組み、地域経済効果を最大化させるための取り組み、地方誘客促進に向けた取り組みを推進し、経済の活性化や賑わいの創出に努めて参ります。
景観計画や歴史的風致維持向上計画の策定を促進し、良好な景観を形成するとともに、地方公共団体が取り組む地域固有の歴史・文化・風土を活かした歴史まちづくりに対する支援を引き続き進めて参ります。
「道の駅」は、地方創生や観光の拠点を目指す「第3ステージ」に入り、「まち」と「道の駅」が一体となって発展する「まちぐるみ」の取り組みや、災害時に防災の拠点となる防災機能強化の取り組みを進めて参ります。
2021年に閣議決定された「第2次自転車活用推進計画」に基づき、私が本部長をつとめる自転車活用推進本部を中心に、政府一体となって、自転車通行空間の計画的な整備、シェアサイクルやサイクルトレインなどの普及促進、ナショナルサイクルルートなどを生かしたサイクルツーリズムの推進など、自転車の活用の推進に向けて取り組んで参ります。
地方の誘客促進に向け、「観光の足」を担う交通機関において、訪日外国人を含む旅行者により快適に利用していただくため、多言語による案内表示・案内放送の充実、クレジットカード対応型券売機や交通系ICカードなどの利用環境整備、モビリティポートの設置、交通手段に関する情報提供の充実などの二次交通へのアクセス円滑化・利便性向上などの取組を進めて参ります。
□IRの整備
IRは、多くの観光客を呼び込む滞在型観光の拠点であり、観光立国の実現に向けた重要な施策です。2023年4月に認定を行った大阪の区域整備計画について、実施状況評価を行うとともに、依存症対策などの弊害防止対策に万全を期すなど、2030年の開業に向けて対応を進めて参ります。
□航空ネットワークの維持・確保など
我が国の航空需要については、国内・国際ともに旅客数は回復傾向にあるものの、燃料費や整備費などのコストが増加していることにより、特に国内路線の収支が厳しい状況におかれています。
航空ネットワークは、公共交通として国民の社会経済活動を支えるとともに、インバウンドの受け入れをはじめ、ポストコロナの成長戦略にも不可欠な「空のインフラ」です。航空機燃料税の軽減措置などを行うことにより、地方創生や観光立国の実現に不可欠である航空ネットワーク維持・活性化に取り組んで参ります。
また、急速なインバウンド需要の増加に対応するため、グランドハンドリングや保安検査をはじめとする空港業務の処遇改善や人材確保・育成などを支援するなど、引き続き、受入環境整備を推進して参ります。
本年も国土交通省の強みである現場力・総合力を生かして、国土交通行政における諸課題に全力で取り組んで参ります。国民の皆様の一層の御理解、御協力をお願いするとともに、本年が皆様方にとりまして希望に満ちた、発展の年になりますことを心から祈念いたします。