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既存施設の活用を、訪日客4千万人受入れへ、日本商工会議所国交省に意見書

須田寛氏
須田寛氏

 政府が取りまとめている「観光立国に向けたアクション・プログラム」に対し、日本商工会議所(三村明夫会頭、515会議所)は4月21日に常議員会で観光基盤の整備などに関する具体的な取り組みなどの意見をまとめ、同日、石井啓一国土交通大臣、田村明比古観光庁長官に提出。須田寛観光委員会共同委員長は訪日外国人旅行者4千万人達成には宿泊施設と観光資源の拡充が不可欠であり、とくに「既存の施設を活用することがすべての土台である」と強調した。
【後藤 文昭】

 今回の意見書は大きく分けると4つの柱で構成されている。このなかで重点となるのは「宿泊施設と、観光施設の拡充」だ。

 宿泊施設の拡充に関しては、「現状旅館の全国平均稼働率は37・8%とは低く、旅館にもっと外国人や日本人が泊まれば、最低限度の増強で済む可能性がある」と分析。しかしそこには商慣習の違いや旅館とホテルの適用法律の違い、旅館のコストの高止まりによる価格上昇などの障害があり、客が利用を敬遠している現状がある。このような観点から簡単には旅館の活用ができないが、旅館やホテルなどを一律に規制できる法整備の実行と経営改革、宿泊地の分散や休暇の分散化、民泊の制度化を国にも協力してもらい改善していけば、須田氏は「最低限度の補強で4千万人を受け入れることは可能」とした。

 「観光施設の拡充」では、新たな施設をつくるのではなく、今ある施設を活用することが重要だと強調。(1)街並みの整備や観光資源化、道路整備などの空間活用(2)若者層など観光に接する層の拡大(ユニバーサルツーリズム)(3)テーマ別観光(道や駅など資源の見方を変える)――など3つを土台にし、足りない部分を開発で補うことが重要だと主張した。そのうえで、「政府が文化財や国有財産の活用を明文化したのは、非常に大きな意味がある」と評価し、地方自治体の働きにも期待した。

 また「観光拠点都市」「観光特区」のような都市を全国で数カ所指定してほしいと、改めて要請。これは、政府が1月29日に「観光立国ショーケース」として、北海道釧路市、石川県金沢市、長崎県長崎市の3都市を選定したことに関し、名称の変更やこれを全国に広げ、商工会議所のネットワークなども活用して広域観光圏を形成するという構想だ。

 また、今ある観光資源の活用や観光基盤のためには、「現行法の緩和や整備など、国からの支援も重要になる」と述べた。

 以前から提言していた観光に関わる安全対策に関しても、再度要請をした。とくに定住人口より観光人口の方が多い都市の休日の日中を想定し、大震災発生時の訪日外国人を含む観光客の危機管理体制整備を重要視。「帰宅不能者受入体制などの整備が進んでいない状態を非常に危惧している」とし、「誘客したのなら、責任上最低限度命を守ることを念頭に置かなければならない」と受け入れる側の心構えを提示した。

 このほか、出入国手続きの改善にも言及した。

 これらの意見に関して田村長官から「今回の意見書の内容は、相当部分盛り込みたい。法制度に関しても根本から見直しをしていきたい」との回答を得たという。

 須田氏は最後に「観光は文化活動であり経済行動である。必要不可欠な産業だと旅行業に携わる一人ひとりが認識することが必要だ」と強調した。

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