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「もてなし上手」~ホスピタリティによる創客~(170)人手不足を言い訳にしない 新しいサービスで報いる

2025年3月15日(土) 配信

 人手不足下でもできる「おもてなし」を宿泊したホテルで体験しました。最近では冷蔵庫内に飲み物などを入れないホテルが増えました。毎日すべての部屋に補充することは大変な作業です。しかし、利用する側からすると部屋で何も入っていない冷蔵庫を開けたときにはがっかりとするものです。今ではそれにも慣れて到着前に必要なものを買ってからホテルに向かうようになりました。利用者の負担はまちがいなく増えています。

 ネット予約により事前決済が増えました。チェックイン時には、支払い忘れなどに対応するためにデポジットとして一定の金銭を預けたり、クレジットカードの登録も求められたりします。しかし、変わらずチェックアウト時には列に並ばなければならないのです。

 先日宿泊したホテルも同様に冷蔵庫は空でした。しかしチェックイン時に「精算はすでに済んでおりますので、追加の支払いがなければチェックアウト時には並ばずにあちらのボックスにキーをご返却いただければ結構です」とのことでした。

 翌朝のことです。フロントにあるキーの返却ボックスに向かって歩いていたら、フロントの外にいたスタッフが、チェックアウトのために並んでいる人たちに「おはようございます。直ぐにご案内いたしますので、こちらでしばらくお待ちください」と笑顔で声を掛けています。

 そんなときにエレベーターから降りてきた私に気づくと、数歩歩み寄り、「チェックアウトでしょうか? もし追加のお支払いがなければ、私がキーをお預かりいたします」と笑顔で声を掛けてくれたおかげで、その場でスムーズにチェックアウトが完了したのです。このスタッフこそが今回の主役です。

 お客様に負担をかけた代わりに新しいサービスで報いる行動に感動しました。

 並ぶ人が多くなればフロントスタッフを増やすことを考えてしまいがちです。確かにスタッフが増えた分スピードはアップするかもしれません。しかし、多少短くなっても並ばなければならない現実が変わらないとするならば、気持ちよく並んでもらうためにフロントの外で対応する人が重要な役割を果たすのです。

 追加支払いのない宿泊客にキーの返却ボックスを設けているホテルも増えましたが、非常に危険なシステムであると思います。利用者の最後の声が聞けないのです。ところが私のキーを預かってくれた人は「昨夜はごゆっくりとお休みいただけましたか? お気づきの点がありましたら……」と忙しいフロントではなかなか聞けない質問もしてくれたのです。一見無駄と思える人こそがおもてなしの最前線で顧客満足を提供していけるのです。

 

コラムニスト紹介

西川丈次氏

西川丈次(にしかわ・じょうじ)=8年間の旅行会社での勤務後、船井総合研究所に入社。観光ビジネスチームのリーダー・チーフ観光コンサルタントとして活躍。ホスピタリティをテーマとした講演、執筆、ブログ、メルマガは好評で多くのファンを持つ。20年間の観光コンサルタント業で養われた専門性と異業種の成功事例を融合させ、観光業界の新しい在り方とネットワークづくりを追求し、株式会社観光ビジネスコンサルタンツを起業。同社、代表取締役社長。

 

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