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日本大学国際関係学部、観光教育シンポジウム開催 さらなる普及へ議論深める

2025年3月18日
編集部:木下 裕斗

2025年3月18日(火) 配信

シンポジウムのようす

 日本大学国際関係学部はこのほど、三島校舎(静岡県三島市)で同学部の宍戸学教授が文部科学省の科学研究費助成事業で採択された、「高等学校における観光ビジネス教育導入による観光教育の体系と接続に関する研究」の成果を発表する観光教育シンポジウムを開いた。基調講演とパネルディスカッションも開催し、観光教育のさらなる普及に向けて議論を深めた。

 第1部の科研費による研究成果の報告で、宍戸氏は現在、大学や専門学校、高校の商業科などで観光の人材育成のための教育や、小中高校で観光を素材に学ぶ授業などさまざまな講義が行われていることに言及。一方、「小中高大など各学校段階に応じた継続的な教育内容についての議論は少ない」という。

宍戸学氏

 このため、2022年度に商業高校で新科目「観光ビジネス」が導入されたこを契機として、高校における観光教育の役割を明確にしたうえで、「小中高大学それぞれが連携し、接続する小中学校と大学での学習内容を見極める必要がある」と提言した。

 第2部の基調講演「観光を学ぶ人を育てるー子ども時代からの地域人材育成―」では、玉川大学名誉教授で名桜大学国際学部特任教授の寺本潔氏が登壇し、観光教育の意義を説明した。

寺本潔特任教授

 地方では交流人口の増加による経済活性化が期待されるなか、「観光客の満足度を高めるために、他者目線立った地域の価値を見出す力や、発信する能力を養うことができる」と話した。さらに、「生徒が地元に愛着を持ち、将来の定住者増加にも期待できる」と述べた。

 しかし、観光ビジネスを導入している高校の商業科は全体の4割ほどで推移している。理由として、「教員のための資料や教科書が少ない」と語った。

 このため、寺本氏は文部科学省や日本観光振興協会の支援を受け、全国で子供に観光教育を行いながら、教師に指導法をレクチャーする出前授業を展開してきた。

 寺本氏は「観光が地域経済に貢献していることを知らない教員もいる。観光教育は、生徒の能力向上に効果があり、地域活性化にもつながることを説明していきたい」と、観光教育の拡大に向けた意欲を示した。

 第3部のパネルディスカッションでは、寺本氏に加え、日観振人材育成部長の廣岡伸雄氏と、観光庁観光産業課の井上翔太氏、北海道ニセコ高等学校の中谷知記氏が登壇。コーディネーターは、宍戸氏が務めた。

 廣岡氏は、小学生から観光産業の経営トップまでの人材育成を行ってきたことを紹介。小中での観光教育は近年導入が進む一方、「金融業界は古くから、銀行のスタッフが学校で授業を行う金融教育を展開し、銀行を身近な存在として発信してきた。観光業は遅れているため、積極的に推進したい」と話した。

廣岡伸雄氏

 観光を学んだ学校の先生が少ないため、観光教育を導入する学校が少ないことに触れ、「教師用手引書や副読本を作成している」と語った。

 井上氏は、観光教育を通じた地域との交流で生徒のさらなるシビックプライド醸成につながることを説明。そのうえで、「観光庁では地域が学校と連携して、観光教育を推進するための手引書を公開している。インターネットなどから自由に活用してほしい」と呼び掛けた。

井上翔太氏

 中谷氏は、ニセコ高校で、より良い地域を他者と協働して創造する人を育てることを教育目標に掲げているため、生徒と地域の人とのグループワークを開催。地域の課題として挙がった2次交通や夏季のサステナブコンテンツの不足の解決へ実証実験を行った。

中谷知記氏

 「(高校生が)大人と協働することで、学びのリアリティ高め、シビックプライドも醸成できる」と効果を説明した。

 寺本氏は小中学校で、生徒一人ひとりの職業観を育てるキャリア教育の進め方について、生徒が変容や成長を自己評価できるよう、学習や活動の記録を資料としてまとめるキャリアパスポートを提案。「生徒好きや得意なことから、就きたい仕事が分かるようになる」と理由を説明した。

 また、新科目「観光ビジネス」は商業科のみで実施されているため、普通科での観光教育の導入も提言した。

 宍戸氏は今後の観光に教育ついて「学習内容の理解を深めるため、地域との関係強化が必要。そのうえで、具体的な進め方の議論を進めていくべき」と締め括った。

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