「創業の精神忘れず、価値創造を」 岐阜・長良川温泉の十八楼が創業165周年 「感謝のつどい」開く
2025年3月24日(月) 配信

岐阜県・長良川温泉の十八楼が2025年に創業165周年を迎えたことに加え、8代目当主で社長の伊藤善男氏が昨秋の叙勲で「旭日双光章」を受章したことから3月23日(日)、同館で「感謝のつどい」が開かれた。伊藤社長は招待客を前に「創業の精神を忘れず、新たな価値を創造し続ける」と誓った。
政財界から約100人が招かれ、これまでの歴史を振り返りつつ、交流を深めた。伊藤社長はあいさつで、「旭日双光章の栄を賜ったのは、支えてくださった皆様のおかげ」と謝意を伝えた。来賓として出席した野田聖子衆議院議員、江崎禎英岐阜県知事、柴橋正直岐阜市長、中村広樹国土交通省中部運輸局長が祝辞を述べた。
同館の起源は1860(万延元)年、松尾芭蕉の「十八楼の記」にちなみ、それまでの館名・山本屋から、十八楼に改称したことに遡る。当時は芭蕉が「十八楼」と名付けた水楼の遺跡も風化し、皆がその存在を忘れていた。地域の宝を館名に託し、再興へ踏み出した年を創業と位置付けている。
明治期には舟運による物流拠点として繁栄。好景気に沸く大正期は関西方面からの鵜飼客で賑わった。だが、昭和の戦時下、建物は日本軍に接収されることに。幸いにも戦火を免れ、戦後は復興に尽力した。
近年は「観光ホテルから老舗旅館へのリブランディング」を掲げ、多様な旅行需要に対応できるよう露天風呂付客室の新設や、古い町並みを景観に取り入れた改装を実施。20年から館内で学習塾を直営するほか、公教育や地域の大学の職務を担う伊藤知子女将が中心となり、子供たちの郷土教育にも力を注ぐ。23年には皇族や文豪も宿泊した旧いとう旅館を、1棟貸しのヴィラとして再生した。芭蕉の言葉として知られる「不易流行」を社是とするなか、創業者から続く「もてなしの心」を持ち続ける一方、人材育成やまちづくりにも積極的に取り組んでいる。
伊藤豊邦専務は「(十八楼が期待される)新たな役割を意識し、来るべき創業200年に向け、さらなる精進を積んでいきたい」という。