JTB、持続可能性とDEIB 山北社長「企業基盤に不可欠」
2025年3月27日(木)配信

JTB(山北栄二郎社長、東京都品川区)は3月13日(木)に記者懇談会を開き、同社が推進している「サステナビリティ」と「DEIB(多様性・公平性・包括性・心理的安全性)」の方向性や取り組みを説明した。山北社長は「サステナビリティとそれを支える人財にフォーカスを当て、企業の基盤づくりを進めている」と述べ、産業の持続的発展に基盤づくりが不可欠との考えを示した。
JTBはこれまで旅を交流と捉え、旅行業から「交流創造事業」と定義し、幅広い事業を展開してきた。交流の拡大による環境負荷といったマイナス面の問題解決も、先陣を切って実現につなげる方向性を示唆した。サステナビリティ担当の西松千鶴子執行役員は「マイナスのインパクトをできるだけ軽減し、交流によって生まれるプラスの価値の最大化を目指す」と力を込めた。
事業パートナーとの共創拡大に一層力を入れ、地域の社会や環境に配慮した商品やサービス、機会などの造成を推進していく。持続可能な社会の実現に向けて、顧客や事業パートナーとの相互理解を深める交流の好循環を生み出し、サステナブルな交流創造の価値を示していく方針だ。
JTBグループでは、観光地での清掃活動や自然環境の保全活動を行う「地球いきいきプロジェクト」を約40年前から取り組んでいる。西松執行役員は「グループ各社や地域が協力し合う同活動が、社員の根底になっている」と説明した。
共創の一例では、カナダ観光局やスイス政府観光局と持続可能な旅の拡大や、シンガポールのマンダイ・ワイルドライフ・グループと動物保護に関連した体験プログラムを共同開発している。国内では、アサヒビールと地域の課題解決に取り組むプロジェクト、省庁や有志団体の航空脱炭素化に参画、地域の小学生と食品ロス商品の開発などの取り組みを紹介した。
観光業界に関しては、持続可能な旅行の国際基準を策定するグローバル・サステナブル・ツーリズム協議会(GSTC)のツアーオペレーター認証を取得。楽天トラベル、ブッキング・ドットコムと連携し、昨年のツーリズムEXPOジャパンでサステナブルツーリズムの啓蒙活動などの取り組みも行われている。
カーボンニュートラルについては、2030年までに自社活動のカーボンニュートラルの達成を目指し、50年までにサプライチェーン全体での達成を目標に掲げている。
□07年から多様性推進、経営の根幹に据える
同社では、07年からダイバーシティ推進室を設置するなど、ダイバーシティ(多様性)推進に向け体制強化に取り組み、23年からは「DEIB」として経営戦略の根幹に据えられている。DEIB担当・人財開発担当・働き方改革担当の髙﨑邦子常務執行役員は「『違いを価値に、世界をつなぐ』というステートメントを掲げ、多様な人財が活躍できる組織づくりに取り組む」と強調した。
DEIB推進に向けた人財戦略としては、①組織開発支援②ワークスタイル変革推進③キャリア開発支援④障害者雇用と活躍支援⑤ジェンダー平等――の5つの活動軸で相互に連携しながら取り組みを強化している。
多様な人財が活躍できるように、髙﨑常務執行役員は「エンゲージメントを最大限に高めることで、新交流創造ビジョンの実現を進める」と推進への意欲を語った。