「もてなし上手」~ホスピタリティによる創客~(171)お客様に想いを寄せるおもてなし お客様への興味・関心を
2025年4月13日(日) 配信
初めて宿泊するホテルにチェックインしたあとに、予約をしていたレストランに向かう必要がありました。その日は雨が降っていましたが、宿泊したホテルにはタクシーの待機所がなく、フロントにお願いすることにしました。
1時間後、ロビーに降りて、フロントスタッフにタクシーをお願いしていることを伝えると「すでに到着しています。ご案内いたします」と、わざわざフロントから出てタクシーまで案内してくれました。そして、歩きながら「これからお食事ですか? 傘をお持ちではないようですが?」と雨の降る外を見ながらおっしゃったのです。
「雨が降るとは思っていなかったので」と応えると、「少しお待ちいただけますか?」とフロントに戻って行きました。それから間もなく傘を持って戻って来て、「よろしければお使いください」とうれしい声を掛けてくれました。
ありがたく受け取りホテルの入口でお借りした傘を差そうとすると、「どうぞこちらに」とスタッフが持つ傘を差し掛けてくれたのです。
わずかな距離であっても傘を濡らしてしまうと、タクシーの中で扱いに困ることを予想してのことです。そして迎えに来てくれたタクシーに乗り込むときにホテルスタッフが発した言葉には本当に驚きました。
「大切なお客様ですので、安全運転でお願いします」。
これまでに数度聞いたことのある素敵な言葉を久しぶりに聞くことができたことに感動しました。
食事を終えてホテルに戻り、お借りした傘を返しにフロントに行くと、「お食事はいかがでしたか?」と声を掛けられました。
これまでにもフロントで近くの食事処を伺ったことがあります。戻ったときにも同じスタッフがフロントに立っていることも多くありましたが、勧めてくれたお店がどうだったかを尋ねられたことは残念ながらほとんどありませんでした。
こちらから「美味しかったですよ、ありがとう」ということがほとんどでしたが、傘を差し掛けて見送りをしてくれたスタッフは、私が戻って来ると笑顔で声を掛けてくれたのです。
自分が勧めたお店をお客様が喜んで下さったのかどうかを気に掛ける言葉は、お客様への関心の大きさでもあると思います。私たちサービスを提供する者がお客様への興味・関心を強く持ち、それを伝えることでお客様はうれしさを感じるものなのです。
こうした声掛けがあるからこそ、「私どもにも自慢のレストランがありますので、次にお越しいただいたときにはぜひご利用ください」と、その後におっしゃった言葉が生きて来るのです。
コラムニスト紹介

西川丈次(にしかわ・じょうじ)=8年間の旅行会社での勤務後、船井総合研究所に入社。観光ビジネスチームのリーダー・チーフ観光コンサルタントとして活躍。ホスピタリティをテーマとした講演、執筆、ブログ、メルマガは好評で多くのファンを持つ。20年間の観光コンサルタント業で養われた専門性と異業種の成功事例を融合させ、観光業界の新しい在り方とネットワークづくりを追求し、株式会社観光ビジネスコンサルタンツを起業。同社、代表取締役社長。