外客受入の最重要点、実体験に基づく説明会開く(JIG)
NPO法人ウェルカムジャパンとジャパニーズ・イン・グループ(JIG、福田金也会長)は6月27日に、「外国人観光客受入基礎研修会」を東京都立産業貿易センター(東京都台東区)で行った。旅館経営者などインバウンドに意欲を示す業界関係者を対象とした同説明会に講師らは、「小規模旅館が外国人観光客を受け入れる際のポイント」をテーマに、予約管理の簡易化から外客宿泊時の留意点まで、実体験に基づく具体的な方法論を展開した。
冒頭、ウェルカムジャパンの原祥隆副理事長は、「インバウンドは本当に奥深い。世界の政治経済と非常に強く結びついている。そのため、日本を訪れた外国人観光客数の背後には、国際間の人の流動性があることを意識しなくてはならない」と語り、インバウンド対策には、専門知識が必要不可欠だという考えを示した。
GLOBAL NETWORK(京都府京都市)代表を務める梶山淳JIG理事は、オンライン決済システム「SQUARE」の紹介から予約サイト手数料の削減まで、予約管理の簡易化などについて解説した。
「SQUARE」は、直接決済と非対面決済に対応しており、宿は、クレジットカード番号1つで、決済を済ませることが可能。梶山理事は、「仮押さえのキャンセルを防ぐのに最適な決済システム」だと語る。「たとえば、予約をしたときに宿泊費の10%をキャンセル料として請求すると設定すれば、繁忙期の直前キャンセルや冷やかし予約を減らすことができる」とし、自社が経営する旅館でも効果を発揮している。なお、「現在、非対面決済ができるのは同システムだけ」だという。
また、予約サイト利用によって発生する手数料を減らし収益増を目指すためには、「自社ホームページでの予約を増やさなければならない」と強調。(1)予約ができること(2)プランの充実(3)予約サイトより料金が安いこと(4)決済もスマートフォンに対応(5)多言語化(6)SNSからの誘導――の「6つの取り組みが、自社ホームページの魅力アップと収益増の秘訣」だと力強く語った。
魚敏旅館(長野県下高井郡)の主人で、宮阪和久JIG副会長は、「外国の方の特別扱いはしない。日本人と同じように接すれば、楽だし長続きする。ただし、国民性や文化は理解すべき」だと自身の経験を中心に、施設内外で過ごす外国人観光客への対応方法について説明した。
外国人観光客は、チェックイン後の客室への出入りを嫌う方が多いため、「布団は折りたたんだまま置き、お客様自身に敷かせると良い」。浴衣についても、着付け方法の解説や着後の微調整対応など、“着物文化の体験”として位置づけると喜ばれるという。入浴については、時間指定があればしっかりと伝えることが大切。相手の立場に立ったおもてなしと、宿のルールの徹底が、施設内で求められる対応方法だと説明した。
施設外では、「宿周辺の観光地については、自分で赴き、実際に体験してみることが必要。パンフレットや口頭で、集めた情報を伝えると喜ばれる」と知見を伝授した。また、宮阪副会長が運営する宿近辺には、「スノーモンキー」として親しまれる、温泉に入るサルの出没スポットがあり、「宿から目的地までの地図を、英語と日本語、最低2カ国語を記載して提供してきた。お客様が1人で散策する際にも役立つ」ほか、宿周辺の観光スポットは、リピーター獲得にもつながる集客ツールであるため、「外国人観光客が、どんな所や事柄に興味を持ち訪問するのか」ということを把握することが必要だと強調した。
説明会では、ほかにもSNS対策や受け入れにおけるハードとソフト両面の準備について、林俊一JIG副会長や柏原益夫JIG理事、大野政道JIG理事から詳しい説明があった。
福田JIG会長は、クレジットカード決済の手数料について、「安いところに鞍替えできるのであれば、するべきだ」とアドバイス。効率の良い旅館経営の必要性を、受講者らに訴えた。