石勝線廃線、夕張市がJR北に提案、持続可能な交通体系整備へ
北海道旅客鉄道(JR北海道)は8月17日、石勝線(新夕張―夕張間)の鉄道事業廃止を発表した。今回の廃止は、夕張市側から要望されたもので、同市の提案が、JR北海道の「各々の地域に合った交通体系を相談したい」という考えと合致。社内検討の結果、今回の結論に至った。なお、廃線の時期は未定。夕張市としては急な会談だったため、地元住民の理解を得ることが大きな課題になる。
夕張市の鈴木直道市長は8月8日、札幌市内のJR北海道本社で、同社の島田修社長に「JR北海道とともに、知恵を出し合いながら、地域公共交通のモデルをつくりたい」と、石勝線の廃線を提案・要請した。そのなかで鈴木市長は、(1)市の進める複合施設や交通結節点整備への協力(2)JR北海道が所有する施設の使用協力(3)JR北海道社員の夕張派遣――を求めた。その後の会見で廃線の時期に関して、「市の複合施設使用開始の2019年になるのではないか」との見解を示した。
石勝線は、1892年に夕張炭山で産出される石炭の輸送を担うために開業した。室蘭港への石炭輸送により活況を呈したが、石炭産業の衰退などにより、鉄道需要が減少。その後もモータリゼーションの進展や、高校の閉校など線区を取り巻く環境の変化から、利用者が減少を続け、地域における鉄道の利用も限られたものとなった。
また同線区には使用開始から100年近く経過した橋梁とトンネルがある。現状では列車の運行に支障はないが、運行維持のためには、これら土木構造物の老朽更新などの対策に大きな費用がかかる。
JR北海道が発足した1987年度の輸送密度は1129人だったが、2015年度には10分の1の118人に減少。14年度の収支状況も、営業収入1400万円に対し、経費が約2億円、差し引き年間約1億8千万円の赤字になっている。また、当線区には路線バスが並行して走っており、鉄道が1日上下10本に対し、路線バスは、新夕張―南清水沢間で上下11本、南清水沢―夕張間で上下20本運行と、路線バスが重要な生活の足となっている。
市長は会見の中で、「自治体がJRの動きを待ち、JRはなかなか方針を出さない。北海道もJRがどう動くのか、自治体とどう協議するのか、傍観している。時だけが過ぎるなかで、1番大変な想いをするのは市民であり、道民である」との思いから、「交通手段を守るためには、具体的にどうしていくのかということを、みんながそれぞれ知恵を出して考えなければならない」と述べた。
12月には留萌線の廃止も予定されている。今回の決定が市民であり、道民の交通手段を守るための先例になることを期待したい。
【後藤 文昭】