地方へインバウンドを呼び込むには―、「勇気を出す」ことがカギ、全旅連JKK
全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会の女性経営者の会(JKK、岡本尚子会長)は9月28日、インバウンド市場の実情や重要性を学ぶ機会として、滋賀県大津市内で「全旅連女性経営者の会オープンセミナーin滋賀」を開いた。当日はさまざまな立場でインバウンドと観光業に携わる講師が登壇。国や地方の取り組み、人気観光地の実情など、テーマは多岐にわたった。需要取り込みに関しては、「勇気を持ってやってみること」が重要と、強調された。
【後藤 文昭】
岡本会長は2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックを「おもてなしを生業とする日本中の宿の本領を発揮できる好機」と語った。そのうえで、1日でも早く、1軒でも多くの宿がインバウンドに興味を持ち、取り組みをスタートすることが「五輪後も観光業が発展する原動力になる」と強調した。
パネルディスカッション「地方が主役~あなたの街にインバウンドを呼び込もう~」には、小俣緑氏(観光庁観光産業課係長)と、栗山圭子氏(京都新聞社編集局文化部長、生活学芸担当部長、論説委員)、南めぐみ氏(エクスペディアホールディングス大阪〈南エリア〉、奈良地区主任)、河原千晶氏(犬鳴山温泉不動口館代表)が登壇。稲熊真佐子氏(豊田プレステージホテル代表)がコーディネーターを務めた。
大阪府泉佐野市の宿で訪日外国人客を受け入れている河原氏は「バラバラに地元をアピールしている人をまとめることが大切」とし、「古民家を活用し、侍体験や書道体験などができるまちを目指している」と地元での取り組みを紹介した。
一方、訪日外国人の送客に携わる南氏は、宿が気づいていない魅力が発信できるかは、「柔軟性」がポイントだと答えた。「例えば多くの旅館が採用する1泊2食付のシステムは、海外では認知されにくく、また料金が高くなってしまい、来てもらえないケースもある」と一般的な外国人観光客の心理面を紹介。周りに飲食店が無い宿が素泊まりプランを販売し、客が食事したいといったときに、オプションとして食事を提供することで、収益を確保した例などを挙げた。
京都の文化や観光を取材している栗山氏は、インバウンドの急増で「今後文化的すれ違いが際立つのではないか」と述べた。「地元京都では、外国人の行動で地域住民が日常生活に圧迫感を感じており、日本人旅行者の満足度も下がっている」と指摘し、「リピーターになってくれる日本人を大切にするための対応を考えるべき」と語った。
小俣氏は、観光庁で人材育成に関わる立場から「国の宿泊業への期待は高い」とコメント。地域雇用の創出と経済波及効果の高さを理由に挙げ、旅館が1軒潰れると、その地域に与えるダメージは大きいと強調した。そのうえで、経営ノウハウを学ぶ場やさまざまな助成制度があると紹介し、「宿泊業界の人には誇りを持ってほしい」とメッセージを送った。
会場からは「若者に旅館を知ってもらうために、宿泊業界はどうするべきか」という質問も出た。小俣氏は全旅連青年部が17年2月22日に行う「第3回旅館甲子園」を、「外に広く発信する場所にしてはどうか」と桑田雅之部長に提案したことを報告。また、「観光に関わる学部、学科の学生にも参加してもらえるよう、積極的に行動する」と語った。
パネルディスカッションに先だって、アレックス・カー氏(NPO法人ち庵トラスト理事長)が「地域におけるインバウンドの取り組み」と題し、講演を行った。