10年後の未来を議論、発足60周年記念シンポ開く(長野県・飯島町)
長野県上伊那郡飯島町(下平洋一町長)は9月17日、飯島町文化会館大ホールで、発足60周年記念シンポジウム「つなごう未来へ」を開いた。飯島町は、NPO法人ふるさとオンリーワンのまち(津田令子理事長)が2014年11月に、「第5号ふるさとオンリーワンのまち」に認定。この縁もあり、パネルディスカッションでは、同NPOのメンバーと、下平町長をはじめとする地元の代表者らが「10年後の飯島はこうなる!?」をテーマに、意見交換を行った。
下平町長は冒頭、「60周年といえば、還暦にあたり、本当の大人の感性、感覚が身についてきた年」とあいさつし、「現在さまざまな地域で消滅可能性の危惧もあるが、飯島町の特徴である農地を管理することは非常に大事なこと」と強調した。「2つのアルプスに囲まれた自然豊かな田園地帯は、今は稲が金色に実り、ソバの花が銀色に咲いている。この素晴らしい景観は、地域の人たちが守ってきた。地方創生へ、新しい町づくりに町民の皆さんとともに挑戦していきたい」と呼びかけた。
さらに下平町長は「飯島町は10年後大きく変わる。その最大の要因は、リニア新幹線の駅が飯島町の近くにできる計画だ」と話し、「飯島町はリニア駅の奥座敷となるが、今から準備をしなければ都市部に住民が流れてしまうこともある。飯島町にはさまざまな魅力があり、それを発掘し、田舎の底力を見せるために、子供たちが誇れる、希望のあるまちに皆でしていこう」と住民の総参加を求めた。
続いて、松下寿雄町議会議長は「シンポジウムの1部は飯島町の子供たちに未来を語っていただく。2部はNPO法人ふるさとオンリーワンのまちの方々を迎え、飯島町の将来を語り合う場になっている。未来へつながるアイデアを期待している」と述べた。
子供たちの意見発表では、町内の小・中学生6人が「小さくても輝きのある街にしたい」など、未来の飯島町への想いや願いを発表。その後、小学生がアトラクションダンスを披露した。
第2部のパネルディスカッション「10年後の飯島町はこうなる!?」では、NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長で、トラベルキャスターの津田令子氏が司会進行を務めた。パネリストには、飯島町から下平町長をはじめ、地域おこし協力隊員の竹馬慶宣氏、いいじま文化サロン会長の松村まゆみ氏、WAVE代表の片桐剛氏、KOUSEI代表の森光星氏ら、農業や文化、IT、建設業などさまざまな分野で活躍する地元の代表者が登壇。
一方、NPO法人からは、秋山秀一氏(旅行作家)、竹村節子氏(温泉旅行作家)、古賀学氏(松陰大学教授)、増田剛氏(旬刊旅行新聞編集長)が出席した。
秋山氏は「子供たちの意見発表でも語られた『小さくても輝きのあるまち』は、海外にはたくさんある。そこに住むお年寄りや子供たちも輝いている。この飯島町にもそのような輝きを感じる」と語った。
竹村氏は「観光だけが人を集める手段ではない」と述べ、「周辺地域とは違う、ここにしかない財産は何かという部分にもう一度目を向けてほしい」と訴えた。また、「私の知り合いも飯島町に移住している。それだけ居心地の良さをもっている地域なのだなと思っている」と話した。
古賀氏は「一つひとつの自然景観や農産物などは素晴らしいが、例えばユリの花と音楽など、さまざまな組み合わせる視点も大事」とアドバイスした。
増田氏は「若い世代が旅をしないと言われているが、これからの飯島町を担う子供たちは東京や名古屋ばかりに目を向けるのではなく、世界を旅し、広い視点から自分たちのまちの将来を考えてほしい」と述べた。
津田氏は「飯島町に20年間魅せられてきたが、今日子供たちの発表を聞きながら、また新たな感動を覚えた」と語り、「飯島町には3つの間(あいだ)がある。都会にはない、ゆったりとした『時間』、2つのアルプスに囲まれた自然豊かな『空間』、そして、人と人との距離感の『人間(じんかん)』が心地いい。この3つの間を守りながら、10年後の未来に期待している」と締めくくった。