test

ガストロノミーに焦点、食文化を通じた地域振興を

(左から)小川氏、久保氏、フェルドモ氏、篠田氏、浅田氏、飯盛氏
(左から)小川氏、久保氏、フェルドモ氏、篠田氏、浅田氏、飯盛氏

 ツーリズムEXPOジャパン2016の国内観光シンポジウムでは、「ガストロノミーツーリズムで地域を元気に」をテーマに、モデレーターを小川正人ANA総合研究所代表取締役副社長が務め、パネルディスカッションなどが行われた。参加者はヨランダ・フェルドモ国連世界観光機関(UNWTO)アフィリエイトプログラム部門長と久保征一郎ぐるなび社長、篠田昭新潟市市長、浅田久太浅田屋社長、飯盛直喜富久千代酒造社長。なお、ディスカッション前には、フェルドモ部門長から、基調講演が行われた。

 9月22日に開かれたツーリズムEXPOフォーラムで田川博己会長は、「観光大国となるためには、DMOの取り組みが重要となってくる。現段階では、従来の観光連盟の名前が変わっただけのものが多い。お祭など、地域の文化を発信していくためには、マーケティングとマネジメントに力を入れていかなくてはならない」と語り、地方創生の重要性を改めて指摘し、デスティネーション・マネジメント・オーガニゼーション(DMO)の推進加速の重要性を指摘した。DMOは資金の有効利用をはかり、地域の稼ぐ力を培うための組織。本来、地域に根付く各企業によって費用が捻出され、運営される民間主体での取り組みだが、日本版では、政府や自治体主導のものが多い。実際、従事者から「地域の事業者に対し、すぐに出資を求めることは難しく、まずは取り組みの意義を理解してもらう必要がある」という声も多く、DMOの意義が、地域に未だ深く浸透していないという意見もある。

 伝統や文化と同様、食もまた地域に根ざしたものである以上、地域が主体となった発信が必須となる。「ガストロノミーツーリズム」に参画すれば、地域は主体的に食と観光を結びつけた誘客活動を展開することが可能だ。そのため、日本版DMOと併せて、あるいはその一部として同ツーリズムを取り入れれば、地域はより短期間に、稼ぐ力の獲得を期待できる。

 フェルドモ部門長は基調講演で、「観光のこれからの方向性を考えたとき、旅行者が“体験志向型”で“質を重視”していることを念頭に置かなくてはならない。そして、この2つを満たすものとして、“ガストロノミーツーリズム”はあるのだということを強調したい」と語った。また、ガストロノミーが持つ、観光業を促進させる資源として(1)差別化(2)新たな旅行者の受け入れ可能性(3)秘境の地への需要供給(4)情報発信(5)信頼性――の5つを挙げた。とくに、差別化では各地域のユニークな部分を売り出す必要があり、「インフラの整備だけでは不十分で、受け継がれた有形無形の文化のなかで人間の心に訴えるものでなくてはならない」と述べ、ガストロノミーこそがそれを果たすものだという認識を示した。また、秘境の地への需要供給では、旅行者はあまり人が訪れないデスティネーションを好む傾向があり、主要都市ではない秘境の地を戦略的にアピールするためにも、ガストロノミーは有効なのだという。

 フェルドモ部門長は、食文化の持つ歴史性にも注目しており、食文化固有のストーリーを旅行者に提供できれば、情報発信という部分でも、同ツーリズムを用いることで、地域は大きなアドバンテージを得ることができると話した。

 続くディスカッションでは、久保ぐるなび社長が、「これからは、地域固有のオリジナリティが、旅行者の目的となっていくはず。食は必ずそのなかにあるため、大切なことは、関連するコンテンツを発掘し、市場を開拓すること。そして、地域から継続して情報発信していくことだ」と語り、ぐるなびが、同ツーリズム推進を全力でバックアップする姿勢を表した。

 数多くのVIPをもてなしてきた浅田屋の浅田社長は、自らが携わる料理人の研修を通じた海外との交流に触れ、「民間の取り組みに、国や自治体がより積極的にのっかってくれれば、もっともっとうまくいくはず」だと語り、官民一体となった取り組みに期待を示した。

 これを受け、篠田新潟市市長は、「浅田社長の取り組みは、本当に素晴らしい。県だけでなく、地域の各自治体も努力をしなくてはならない」と述べた。

 飯盛社長は、「私の地元にも、まだ知られていない場所が沢山ある。国内外国の方に対し、もっと興味を持ってもらえるパンフレットを作成し、住民の意識も高めていきたい」と語り、今後に向けた展望を語った。

【謝 谷楓】

いいね・フォローして最新記事をチェック

PAGE
TOP

旅行新聞ホームページ掲載の記事・写真などのコンテンツ、出版物等の著作物の無断転載を禁じます。