天・地・人がそろう土地、「エーデルワイン」(花巻市大迫町(おおはさままち))
岩手県花巻市大迫町にあるエーデルワイン(藤舘昌弘社長)は10月13、14日の2日間、ワイン専門紙と観光専門紙の記者向けのプレスツアーを行った。大迫町は、ワインの味を左右する天(土地独特の気候)と、地(土壌の成分の特徴)、人(栽培する人の個性)がそろう地。「いいワインはいいブドウから」を掲げ、地元のブドウでワイン醸造を行う同社と、大迫市の魅力を紹介する。
【後藤 文昭】
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エーデルワイン
エーデルワインは、ジャパンワインチャレンジ2016で国内最高賞「トロフィー」を受賞した「ハヤチネゼーレ ツヴァイゲルトレーベ樽熟成」など、さまざまなコンテストでの受賞歴があるワインを醸造。そのほかにも、「森のアダージョ」というホットワイン専用のワインなどあり、50種類にのぼる。
大迫町のブドウ栽培の歴史は、1947年のカスリン台風と48年アイオン台風が始まり。両台風は大迫町に深刻な被害を与え、多くの住民が生活基盤を失う結果になった。当時の国分謙吉岩手県知事は同町を訪れ復興策を練るなかで、「大迫はボルドー(フランス)に似ている」と直感し、ブドウの栽培を奨励した。その後、ブドウの有効活用のために大迫町と大迫農協が62年に「岩手ぶどう酒醸造合資会社」を設立。74年に「エーデルワイン」が設立され、75年に同合資会社を吸収合併。81年には町でワイン専用品種の栽培がスタートした。
同社はワインに使われるブドウの産地を大迫町産、もしくは岩手県産のみとし、とくに地域生産者とのつながりを大切にしている。例えば、各農家が栽培したブドウを同社が醸造し、それぞれのワインにし、生産者が直接消費者に振る舞う試飲会を行っている。生産者は、「直に感想を聞くことができるから励みになる」と歓迎している。畑の土質が違うだけで同じ品種でもワインの味が変化することを体感できるのも、この取り組みの面白いところだという。
また大迫中学校の3年生は総合学習の一環として、年に3回「花巻市葡萄が丘農業研究所」(藤根勝榮所長)で栽培管理体験を行う。同社では収穫したブドウを醸造しワインに加工、5年後の成人式でプレゼントする。
早池峰神楽と遺跡
大迫町のもう1つのシンボルは、「早池峰神楽」(岳【たけ】と大償【おおつぐない】の2つの神楽の総称)。大迫には早池峰山があり、山岳信仰の場所であったことから、今日までこの地で伝承されてきた。また、2009年にはユネスコ無形文化遺産に登録されている。
花巻市総合文化財センター(中村良幸所長)は、花巻市内約1千カ所の遺跡から出土した埋蔵文化財の収蔵保管と調査研究、市内の文化財の展示公開、情報発信を行う施設。常設展示室は「早池峰の自然と文化」をテーマに、自然と文化、歴史、人の4つの分野にまとめて紹介。神楽の面を見ることもできる。