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指宿で地熱発電講演会、温泉枯渇や温度低下など危惧(泉都指宿の温泉を守る会)

多くの観光関係者や市民が詰めかけた
多くの観光関係者や市民が詰めかけた

 地熱発電開発問題で揺れる鹿児島県指宿温泉で、同事業を推進する指宿市に対し、事業の白紙撤回を求める「泉都 指宿の温泉を守る会」(会長=下竹原啓高指宿白水館社長)が11月1日、温泉専門家を招いての「地熱発電開発事例講演会」を指宿白水館敷地内の薩摩伝承館で開催した。

 守る会は市内の複数の旅館・ホテル、観光業者などで結成。「温泉は旅館、観光業者などにとって生命線。地熱発電事業の拙速が温泉の温度や自噴噴出量、噴霧量の低下、泉質劣化と枯渇につながりかねない」と訴え、市が計画する山川ヘルシーランドでの新規試掘、市が承認したバイナリー発電7件に対する許可取り消しと、事業の白紙撤回を求めている。

 市では拡大する反対運動の事態を重く見て、10月27日に豊留悦男市長が「計画凍結」を表明したが、守る会では事業の完全撤廃を目指して運動を強化している。

 講演会開催は、地熱発電に関する十分な知識と情報を得ることが目的。全国で拡大する地熱発電計画にも、警鐘を鳴らしたい考えだ。当日は市の担当者や旅館、観光業者、市民など反対、賛成両派の関係者約130人が参加し、専門家の講演を聞き、意見を交わした。

 講師では、日本温泉協会会長の大山正雄氏が「温泉と地熱発電との共生について」と題して基調講演。そのあとに、同常務理事で群馬県草津温泉の草津観光協会会長の中澤敬氏と同理事の遠藤淳一氏(福島県高湯温泉旅館協同組合理事長)が、それぞれ温泉地での地熱発電問題などについて説明した。

 大山氏は「マグマで水が温められ地上に湧出したのが温泉で、比較的浅いところで循環している」と温泉メカニズムを説明。「地下深度で温泉を取る地熱発電は、温泉の枯渇化や温度を下げる要因になる」と指摘した。

 具体的な事例として、経年的に熱水流量が増加し、蒸気流量が減少して発電能力が減衰する岩手県澄川地熱発電所や、鹿児島県山川発電所での温度低下と発電電力量減衰の経年変化、鹿児島県霧島地熱発電所建設前後のえびの高原噴気地熱地帯の変化などを紹介した。

 神奈川県湯河原温泉では温泉開発によって全体湯量は増えたが、各源泉の湧出量が減少したという実例を挙げ「一定量しか生産できない温泉を過剰に使えば問題が生じる」と強調した。

 そのうえで、「指宿で地熱発電なら名物の砂蒸し温泉も心配」と危機感を表明。指宿の地熱発電収支でも「売電収入より維持管理と人件費が上回り見合わない」と指摘。「温泉は観光と土産、農漁業などさまざまな産業が関わるが、地熱発電は無人化をまねき、地域発展への貢献が見込まれない」と断定した。

 中澤氏は過去に計画された地熱発電を中止させた経緯を紹介。「地熱発電は再生可能ではない。地下エネルギーを取ることは開発だ」と主張。「地域が地域の保護のために反対していくことが大事」と強調し、「指宿は全国有数の温泉地で、他の温泉地に与える影響も大きい」と訴えた。

 遠藤氏も「温泉は日本の宝。大事にしてほしい」と述べた。

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