責任問われる時代、16年観光産業振り返る(JATA)
日本旅行業協会(JATA)の越智良典理事・事務局長は12月22日の定例会見で、2016年の総括を発表した。国際連合が17年を「開発のための持続可能な観光の国際年」としたことに触れ、「観光産業は環境に対する影響も含め『責任』が問われる時代になった」と振り返った。そのほか海外旅行復活や訪日旅行の個人化など、市場分析を交え説明した。
日本人海外旅行者は16年1―11月累計で対前年5%増となった。12年の1849万人を最後に減少傾向にあったが、年間1700万人台まで増える見込み。市場を詳しくみると12年以降訪中・韓は減少傾向で、ほかの市場は09年から微増傾向だった。
15年から16年で円高傾向となり動きが変わった。燃油サーチャージの下落も影響し、訪中・韓は回復の兆しをみせた。越智氏は「訪中・韓が戻れば1850万人はすぐに到達できる」と述べた。
ただ16年の旅行会社の売上高は伸びが鈍く、市場の動きと乖離した。要因の1つに旅行先の変化で単価が下がったことを指摘。テロの影響などで、高単価な欧州は減少し、廉価な近隣地域が伸びたことが響いた。
もう1つの要因に燃油サーチャージの下落を挙げた。燃油サーチャージは売上高の4―5%を占め、下落すれば基本的に減収増益となる仕組みとなっている。越智氏は「過去にも例は多くある。変化にどう対応するかが重要」と強調した。
訪日旅行の個人化では、中国のビザを発行するために必要な、形態別身元保証書発行比率の推移を説明。14年からの2年間に訪日個人ビザの取得者は、人員ベース構成比で16・3%上昇した。5人に2人が個人ビザで日本を訪れる。越智氏は「日本人が数10年かけて行った海外旅行市場の変化を、中国人はもっと早い期間で行うはず」と分析した。