山口の絶景と――、 美食を堪能する旅
元乃隅稲成神社、ふく恋盛り――。「山口の絶景と美食を堪能する旅」と題し、山口県は2016年9月1日にプレスツアーを行った。多くの観光資源を有するが、女性がいきいきと働く姿が印象に残った。昨年末に日ロ首脳会談が開催された山口県の魅力に迫る。
【平綿 裕一】
■青海島(おおみじま)クルーズ、女性船長が案内
2017年に会社設立から50年を迎える青海島汽船に女性船長がいる。岡村有菜さんは14年に入社。「海が好きなので、海に携わる仕事がしたかった」と話した。翌年に同社初となる船長になった。今では操船技術を教える立場となっている。
岡村さんの案内でクルーズへ。青海島は周囲約40キロ。北長門海岸国定公園の中心部にあり、別名「海上のアルプス」と呼ばれる。
断崖絶壁や洞穴、洞門、石柱、奇石など多くある景勝地。これらのなかには黒い有色鉱物を含むものがある。岩肌にヘビやタコのような模様を描きだし、見どころの1つとなっている。
遊覧船は青海島を西周りに、北側の半分で折り返す「観音洞」コース、約50分を運航。
青海島の西側にある花津浦はそれ自体も立派な海に屹立する洞門だが、通り過ぎる際に観音様がお祈りをしているように見える奇石がある。さらに進むと島の西北端に黄金洞がある。洞内岸壁は金箔色に輝く。有色鉱物の作用や日光の反射などによるものとされている。洞窟が2つ寄り添うように見えることから、別名夫婦洞とも。夫婦円満のご利益があるそうだ。
■米CNN日本の最も美しい場所31選の神社
元乃隅稲荷神社(もとのすみいなりじんじゃ)は60年以上の歴史を持ち、米CNNが「日本の最も美しい場所31選」に選出した神社。赤い鳥居123基が、曲流するように青い海へ伸び、その脇に緑の草木が鬱蒼と茂る。この赤・青・緑が非常に映える。
元乃隅稲荷神社近くには国指定の天然記念物「龍宮の潮吹」と呼ばれる場所がある。海からの波が打ち寄せられ、間欠泉のように勢いよく海水が吹き上がる。波が荒い冬の時期は高さが30㍍に上ることもあるという。景観だけでも十分に楽しめるが、観光客を楽しませるのはほかにもある。
高さ5㍍の鳥居に位置する賽銭箱だ。記者らも試していたが、なかなか骨が折れる。昨年11月には大鳥居が新設されて賽銭箱も移設。さらに1㍍高さを伸ばし、現在の賽銭箱は高さ6㍍の位置にある。
■最高樹齢110年を超す秋芳長寿梨
梨は本来は40年ほどで実らなくなるといわれる。1904(明治37)年に植栽された山口県・秋芳町の20世紀梨は、現在も実を付ける。樹齢80年以上の梨の木は120本以上。創業130年の老舗果物専門店・新宿高野から80年を超えた古木の梨を「長寿梨」と認定を受け、販売している。
有名なのは長寿だけではない。2001年に農林水産大臣賞名誉賞を受賞している。日本最大級のカルスト大地で有名な秋吉台。ミネラルを多く含み、豊富な有機物を有する肥沃な土壌だ。この恵まれた環境で育つ秋芳梨は、適度な甘さと酸味、歯触りのいい食感を持つ。長寿も味も品質も評価されている。秋芳梨生産販売共同組合、代表理事組合長の永嶺克博氏は「先代たちからの高い品質の梨を作る想い(規制)を大事にしている」と語った。
■ふく恋盛りを堪能
山口県・下関はフグを「福」にちなんで「フク」と呼ぶ。フグの取扱量は日本一で、農林水産省から「下関ふく」が地理的表示(GI)登録を受けた。GI保護制度は、地域に長年培われてきた特性などで、高い品質を獲得した産品に対し、その名称(地理的表示)を保護するもの。
今回のプレスツアーで宿泊した源平荘は、「ふく恋盛り」を提供している。始まったのは14年12月から。すでに多くの反響があり、結婚式場で提供した実績もある。
下関でも高級とされる「トラフグ」を使用し、ハート型に刺身を盛り付けた一品。盛り付ける皿は、27㌢もある特注のピンク色の萩焼大皿だ。源平荘の繁岡あかねさんはこのふく恋盛り実行委員を務める。「鮮明な薄ピンク色は、イメージに合うよう何度も試作を繰り返しました」「フグは年配者のイメージが強いので、若い人へのアピールで可愛くしました」と語った。フグを味覚だけでなく、視覚からも楽しめる工夫が施されている。