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魅力の箱庭“尾道”

尾道の箱庭的な景色

 尾道市は、「市内のまち並み」と「 村上海賊」(愛媛県今治市と共同認定)に関係する、2つの日本遺産ストーリーを持つ。サイクリストの聖地であり、多くの映画監督に愛された、魅力がぎっしり詰まった“箱庭”の尾道を紹介する。
【松本 彩】

 ■海の守り人〝村上海賊〟

 村上海賊という名前を聞いたことがあるだろうか。2014年に本屋大賞に輝いた「村上海賊の娘」(和田竜著)を読んで、なんとなく耳にしたことがある人も多いのでは。村上海賊は室町時代から戦国時代にかけ、芸予諸島(瀬戸内海西部に位置する諸島)を中心に活躍した海賊(水軍)。因島(尾道市)、能島(今治市)、来島(同)の3家から成り、瀬戸内海の制海権を握っていた。
 村上海賊は現在の金品を略奪するような海賊の一面もあったが、瀬戸内海の水先案内や海上警固、海上運輸などを行っていた。つまり、〝海の守り人〟でもあった。
 因島にある白滝山は、室町時代に因島村上氏の第6代村上吉充が、観音堂を建立したと伝えられていることから別名、「観音山」とも呼ばれている。白滝山はその地形などから、因島村上氏の信仰の場であり、戦略的な見張り場でもあった。

鮮やかな色彩を持つ耕三寺

 ■母の寺〝耕三寺〟

 しまなみ海道の生口島南ICから13分ほどのところに耕三寺博物館がある。耕三寺は大阪で大口径特殊鋼管の製造会社を営んでいた、初代住職・耕三寺耕三が母親の死後、菩提寺として母親への感謝の意を込めて、1935(昭和10)年から30年以上の歳月をかけて建立した、浄土真宗本願寺派の寺院で、「母の寺」と呼ばれている。
 耕三寺の堂塔は、さまざまなものを手本にして建立されている。本堂は京都の宇治平等院鳳凰堂を原型として建立し、孝養門は日光東照宮の陽明門がモチーフになっている。相違点は、色彩や彫刻が手本としたものよりも、鮮やかで豪華であるところ。鮮やかな色彩を使ったのには、初代住職の「母親を綺麗に着飾らせたい」という想いがあったのだろう。耕三寺を訪れる際は、母親への感謝の気持ちを忘れずに、参拝してほしい。

多々羅大橋(しまなみ海道)

 ■サイクリストの聖地〝しまなみ海道〟

 広島県尾道市と愛媛県今治市を結ぶ全長約60キロ(サイクリング推奨ルートは約70㌔)のしまなみ海道は、瀬戸内海の美しい海や島々の景色を眺めながらサイクリングできることから「サイクリストの聖地」として、国内外からサイクリストたちが訪れている。
 しまなみ海道サイクリングロード推奨ルートには、車道の左端に推奨ルートを明示するブルーラインや、サイクリングルートの中で目印となる施設などが少ないルート上に、各島の地点距離を500㍍間隔で記した表示板「瀬戸内しまなみ海道Location Marker」などが設置されている。また、サイクリング中に気軽に立ち寄って休憩などができる「サイクルオアシス」も、しまなみ沿線の施設に整備されているので、安心してサイクリングを楽しむことができる。
 国内最長の斜張橋で、広島県と愛媛県の県境に架かる多々羅大橋(1480㍍)の支柱の下で手を叩くと、龍の鳴き声のような音が反響しながら空に向かって登っていくような現象「多々羅鳴き龍」を体感することができる。美しい景色とともに、さまざまな体験をするのも、サイクリングの醍醐味と言えそうだ。
 尾道市にはサイクリストに優しいホテルがある。JR山陽本線の尾道駅から徒歩10分ほどのところに2014年3月にオープンしたONOMICHI U2は、全国初の自転車に乗ったままチェックインできるフロントが完備されており、自転車はすべての部屋に持ち込むことができる。

おのみち映画資料館

 ■映画のまち〝尾道〟

 小津安二郎監督の「東京物語」や、大林宣彦監督の「ふたり」など、尾道市はたびたび映画やドラマのロケ地に使用されることが多く、1929年から2008年までの約80年間に尾道市内で撮影された映画の本数は45本と、まさに「映画のまち尾道」と言っても過言ではない。
 しかし映画のまちと呼ばれる尾道市も、レジャーの多様化や、DVDの普及などにともない、徐々に映画館への客足は遠のき、最盛期の1950年には4館あった映画館は、2001年には1館も残らず閉館してしまった。
 この状況を打破するべく、立ち上がったのが映画好きの尾道市民たちだ。04年に市民有志による「尾道市に映画館をつくる会」が発足。06年には同会が「シネマ尾道」としてNPO化され、08年に同法人主体の映画館シネマ尾道が開業。メッセージ性の強い邦画や洋画を上映し、再び尾道市が映画のまちとして注目されるようになった。
 おのみち映画資料館には尾道ゆかりの映画資料などが展示されており、ミニシアターでは、尾道ゆかりの映画の予告編などを見ることができる。

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