てるみくらぶ破産、消費者被害額99億円に
返還額は1・2%程度か
格安海外旅行ツアーを販売するてるみくらぶ(山田千賀子社長)が3月27日、破産手続きを始めた。3月24日から航空券の発券を巡るトラブルが発生。8―9万人に影響があり、混乱が広がっている。同社の試算によると、消費者への被害額は99億円、現地ホテルへの未払い金などを含めると151億円に上る。利用者へは日本旅行業協会(JATA)が弁済業務保証金制度から保証するが、弁済限度額が1億2千万円のため、代金の約1・2%と極めて低い返還額になる。
【後藤 文昭】
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今回のトラブルは、国際航空運送協会(IATA)に対し、同社が航空券購入代金を支払えなかったことが原因。スポンサーや銀行と期限直前まで交渉を進めたが、期日の3月23日までに融資を受けられず、その後も資金調達が難しい状況が続き、破産申請に至った。関連会社の自由自在と持株会社のてるみくらぶホールディングスもこれに連鎖し、営業を停止した。
山田社長は27日に国土交通省で会見を開き、ツアー参加者や関係者に対し謝罪。宿泊先が無いなどのトラブルを回避するため、「今後は渡航を控えてほしい」と語った。すでに現地にいる参加者に対しては、「自費ですべてを賄うことになる」と述べた。
観光庁は同社に対し26日、旅行業法に基づく立ち入り検査を実施し、検査で38カ国・地域に約2500人の旅行者がいることを把握。宿泊代金の支払いなどで日本からの送金が必要なケースを想定し、円滑な帰国に向け外務省に協力を要請した。保証制度の是非を問う声には、「現行制度上では適切だが、さらなる消費者保護の観点から必要な事項があれば検討する」と回答した。
同社は感染症の発生などで空席が出た際や、新規就航時などに、航空会社から直接座席を安価に仕入れ、販売していた。
しかし、航空機の小型化などで余剰分の発生率が下がり、大手旅行会社と同じ方式の仕入れとなり、コストが上昇。インターネットの発達によって消費者が個人で航空券の手配をする傾向が強くなったことも加わり、売上が減少した。一昨年からシニア層向けに営業方針を転換したが、広告宣伝を行ったことで媒体コストがかさみ、資金繰りが悪化、破産に至った。
弁済制度の妥当性を問う声も
JATAの弁済業務保証金制度とは、加盟する旅行会社が倒産などをした場合、一定の範囲で消費者に弁済する制度。納付している弁済業務保証金分担金の額の5倍の金額が限度額になる。観光庁によると、2008年以降同制度の利用会社は17件あり、このうち15件が全額、1件が7割、もう1件が4割の返還ができていた。
しかし、今回は返済額が著しく低いため、記者からは積立額の妥当性などを問う声も出た。同庁は弁済額を上げることで安易な倒産などが起こることを心配するが、消費者保護の観点から制度の見直しが求められそうだ。