16年度の営業状況を調査、1室当たりの売上は1243万円(日本旅館協会)
日本旅館協会(針谷了会長)が1月20日に発表した「2016年度版(15年度財務諸表から作成)営業状況等統計調査」によると、旅館は増収増益でホテルは減収増益だった。調査はホテルと、大旅館(100室以上)、中旅館(31室以上99室以下)、小旅館(30室以下)の規模別集計を用いた。経常利益を基準に黒字旅館と赤字旅館をわけた。ただ、2746軒に調査票を発送し、回答を得たのは旅館ホテル合わせて341軒。このうち有効回答数は271で、有効回答率は9・9%だったことに留意したい。
今年度の1軒あたりの総売上高は大旅館が21億2010万円(前年同期比14・7%増)で、中規模旅館が6億9157万円(同14・8%増)、小旅館は2億71万円(同3・4%増)だった。ホテルは7億2516万円(同5・2%減)。一方経常利益率は大旅館が5・6%(同115・4%増)で、中旅館は3・4%(同124・1%増)、小旅館は3・5%(同192・1%増)となった。ホテルは6・1%(同27・1%増)。旅館は増収増益で、ホテルは減収増益だった。
宿泊客1人あたりの売上高はこれまで小旅館が高かったが、大旅館が逆転した。小旅館は1万8664円で同878円の減少で、大旅館は2万2036円で同3170円プラス。ホテルは同1727円増の2万2519円となった。
客室稼働率は規模別の差は縮小しつつあり、小旅館の稼働率上昇が目立った。
大旅館は65・5%(同1・8%増)、中旅館は62・9%(同6・5%増)、小旅館は59・1%(同8・3%増)だった。ホテルは71・3%(同1・9%減)となり、旅館よりも高い稼働率になっている。
宿泊業で重要な指標の1室あたりの年間売上は、旅館が1243万円と同113万円の増加。ただ、最も高い時と比べ75%ほどに落ち込んでいる。
規模別でみると、大旅館が1369万円(同17・1%増)、中旅館が1185万円(同8・7%増)、小旅館が1077万円(同1・0%減)だった。ホテルは827万円。
総原価率は旅館の平均で24・2%と過去5年で最も低い結果になった。売店やコンパニオンなど原価率の高い売上が伸びないことが、低下傾向の要因の1つに考えられる。
GOP利益の調査も行った。所有と運営を分離して把握したいといった意図があり、運営トップの成績表といえる。同調査は減価償却費と営業利益の合計で求めた。
大旅館は11・6%(同11・2%増)、中旅館は9・2%(同5・7%増)、小旅館は8・6%(同11・4%増)となった。黒字と赤字別でみると、小旅館の黒字が11・6%で、赤字が▲0・4%と、高低が顕著となった。
財務状況以外の集客方法なども調査を実施した。
予約方法は、過去5年で旅行業経由が低下している。旅館では44・2%で、とくに小旅館は21・4%(同21・0%減)と4分の1を割り込んだ。
一方オンライン旅行会社(OTA)経由は、これまで小旅館が牽引するかたちできたが、この5年は横ばいになっている。
大旅館は19・7%(同13・9%増)、中旅館は26・5%(同21・0%増)で、2ケタ増と大きく伸びている。一方のホテルは43・9%と旅館より高い。
自社サイト経由では旅館全体で前年度比を割った。旅館は手数料がない自社サイトから予約を増やしたいが、OTAとの競争となっている。
ホームページの対応言語では、ここ5年で初めて日本語のみと多言語化が逆転。日本語のみは45・5%。このうち最も多い言語は英語で49・0%だった。次いで、中国語(簡・繁体語)、韓国語となった。