No.460 エアビーアンドビー田邉代表に聞く、新しい“旅”の創造、市場拡大へ
エアビーアンドビー田邉代表に聞く
新しい“旅”の創造、市場拡大へ
エアビーアンドビーを訪れ、日本法人代表の田邉泰之氏に話を聞いた。3月に閣議決定された住宅宿泊事業法案(民泊新法)について、改めてプラットフォーマーとしての見解を示した同氏。昨年から開始した、体験とユーザーをマッチングする“トリップ”事業も順調だという。今後は、出会いの“場”を提供するプラットフォーマーとして、旅行会社をはじめ、各企業やホテル・旅館、行政自治体と連携をはかり、新しい“旅”の創造と、関連する市場の拡大に注力する。
【謝 谷楓】
――昨年11月から、 “トリップ”事業(サービス)をスタートしました。ターゲットや、旅行会社との関わりについて教えてください。
“トリップ”事業では宿泊の枠を超え、ゲストと体験までをつなぎます。私たちは、趣味や仕事に対する情熱や知見を伝えたいホストと、興味あることについて教えてほしいゲストがマッチングする“場”を、提供しているのです。サービスを利用すれば、趣味をめぐる知見を個人間で、ダイレクトに共有できます。ゲストにとって独学では学びづらいことも、体験を通じ習得できます。
私も“トリップ”を通じ、盆栽や料理に関する体験を行ったのですが、ホストとの交流や、その情熱に触れることで瞬く間にのめり込んでしまいました。今では自分にとって大切な趣味となっています。
私たちエアビーアンドビーのサービスを利用する多くの方が、“ヘビートラベラー”です。日本をはじめ各国・地域のカルチャーに対する知識欲が高く、高収入高学歴の方が多いのも特徴です。“トリップ”ではとくに、この方たちをターゲットとして捉えています。
“トリップ”を通じ、ユーザーは宿泊だけでなく、地域の皆さんと交流を果たすこともできます。地域ならではのアクティビティに参加するなど、経済効果も期待できます。
地域ヘの関心の高いこれらユーザーの移動をサポートし、日本各地を好きになってもらうことが、“トリップ”事業の目的でもあります。旅行会社とは、連携による新しい相乗効果が生まれるはずです。現在、旅行比較サイトを運営する、オープンドア(関根大介社長)とベンチャーリパブリック(柴田啓社長)の2社と提携しています。選択肢を広げることで、市場全体の拡大に微力ながら貢献したいです。
1月には、東京大学との“共同研究”を始めました。ホームシェアリング(民泊)の定義の明確化や活用方法、経済効果の予測研究を行っています。このなかで、幅広い業種の皆さんと、意見交換を続けています。IT企業や金融機関、建設、不動産、鉄道関連の企業などが含まれます。
――ユーザーの安全安心を守るための取り組みについて。
私たちのブランドコンセプトは“Belong Anywhere”。世界中のどこを訪れても、暮らすように旅をすることが事業理念です。ゲストとホストは、1つの“コミュニティ”に含まれる仲間なのです。
レビュー機能では、双方が対等の立場に立って評価し合えるため、悪質なユーザーが排除される仕組みを整えています。セキュリティ対策など、システム面でのサポートも万全を期しています。
ホスト保証のほか、ホスト補償保険も導入していますから、ホームシェアリング時の怪我など、ゲストの安全安心にも配慮しています。
――旅行会社との連携の現状について詳しく。
旅行会社や航空会社の皆さんとの連携を強く望んでいます。旅行業ビジネスの枠内と枠外、両面での連携が可能だと考えています。パートナーとなるかもしれない企業の皆さんとの対話を深めていかなくてはなりません。プラットフォーマーという業態に関する私たちの説明も、十分とは考えていませんから、引き続き努力を続けます。
――ほかの民泊プラットフォーマーとの差別化について。
私たちの目標は、旅をもっと“リッチ”にすることです。プランニングから予約や移動、体験、帰路まで、旅に関わる事柄すべてを、より豊かにしていきたいと考えているのです。新規サービスについても、ユーザーの困りごとを想像し、試行錯誤を繰り返しながらつくりこんでいます。
“トリップ”に着手するなど、事業領域は宿泊のマッチングに留まりません。便利でスムーズな、楽しい旅ができる入口として、ユーザーに選ばれるプラットフォームを目指しているのです。
――国内での展開は。
グローバルで拡大してきたサービスを、国内で受け入れられる、日本らしいカタチにしていくことが、日本法人の目標の1つです。国の定めるルールについても、日本に適したものがあるべきだと考えています。
当社はあくまで、ホストとゲストが直接契約できる“場”を提供するプラットフォーマーです。宿泊施設の運営は一切行っていません。
企業らと連携することで、エアビーアンドビーは多様なサービスに通じるプラットフォームと化していきます。教育機関や各企業との“共同研究”を行う目的もここにあります。
当社がユーザーにとって、旅を上手に楽しめるプラットフォームをつくりこめたなら、移動や飲食、体験など関連ビジネスが生まれ、育つことも期待できます。…
※ 詳細は本紙1669号または5月8日以降日経テレコン21でお読みいただけます。