弁済制度の改正か、利用者保護の観点重視
今夏にとりまとめ 省令や通達を、てるみWG
観光庁はてるみくらぶの経営破綻を受け4月28日に、弁済制度と企業経営のあり方を議論するワーキンググループを開いた。弁済制度は機能していたとの認識を示した一方、利用者保護の観点を重視し「制度の新設か改正・補完を行う必要性」を明らかにした。夏期までに最終とりまとめの発表を予定。省令や通達などを盛り込む。国や業界団体、企業らがそれぞれ取り組むべき方向を打ち出す見通しだ。
【平綿 裕一】
「今回の事案は特殊。既に機能している制度を変えれば、企業活動を歪める可能性もある」。4月28日の同WGでは、慎重姿勢の意見も挙がった。これまで53件中41件の8割弱が、制度を利用して100%弁済できていた。
ただ利用者保護の観点から、弁済額や制度の見直しの声も多い。これらを受け、同庁が提示した弁済制度に対する論点は4つ。1つは弁済業務保証金の水準について。この中に「取引額の規模と分担金」「モラルハザードの防止の観点」の項目がある。今回の事案で問題に上がった、制度の妥当性を議論する。
現在の弁済業務保証金分担金は、第1種旅行業登録の場合、昨年度の取引額が70億円未満なら1400万円と定められている。仮に弁済保証額の水準を引き上げるならば、分担金が増す可能性が高い。
「企業の負担が大きくなりすぎれば、実行性がなくなる」。WG後の記者会見で、観光産業課の黒須卓参事官は懸念を示した。弁済制度の実行性担保と、保護の規模感の調節が壁となっている。
一方で実際に海外に取り残されている人もいる。利用者からすれば対策がないと安心して旅行を楽しめない。黒須氏は「我われが機能していたと思っていた部分に、さらにWGを通じて新たな制度か制度の改正が必要」と利用者保護の観点の重要性を強調した。
このほか、再発を防止するためには「国、関係団体、企業らがそれぞれでも取り組むべき」との見解が委員らで共有された。省令や通達、呼びかけなど、最終とりまとめに盛り込んでいく。それぞれの立場で取り組むべき対策を講じる構えだ。
2つ目に論点に挙げられたのは企業経営のあり方。「一番のキーワードは透明性」(黒須氏)。企業の経営状況などを把握した場合、「利用者にどうのように伝えるのかがポイントだ」(同)と指摘した。
次回は5月中に開かれる予定。計4、5回議論を重ね夏期までにとりまとめ、秋期に対策を実行する見通し。
なお、4月23日に発足した「てるみくらぶ被害者の会」に対し、同庁は「報道でしか把握していない。連絡を待っている。今後具体的に考えや主張を把握できたら検討していきたい」との発言に留めた。