「樂吃購(ラーチーゴー)!日本」運営ジーリーメディアグループ 吉田 皓一代表に聞く
メディアの枠 超える、台湾、香港特化の新事業
訪日台湾、香港人に特化したサービスが耳目を集めている――。ジーリーメディアグループ(吉田皓一代表)は、台湾、香港人向け訪日観光情報サイト「樂吃購(ラーチーゴー)!日本」を運営している。月間PV数は500万を超える。今年に入り体験型ツアー予約システムなどを導入し、メディアの枠を超えて新事業に舵を切った。改めて吉田代表に事業内容や今後の方向性、自治体が持つ課題などを聞いた。
【平綿 裕一、謝 谷楓】
――ラーチーゴーの特徴や日本での企業体制を教えてください。
我われが掲載している記事はすべて台湾人記者が、企画・取材・記事化しています。徹底しているのは読者側の視座に立ったコンテンツマーケティングということ。「これが地域のおススメです!」など、発信側の押し売りをただ記事にしているわけではありません。
自治体からの取材依頼時には、地域のアピールポイントを10個ほど提示してもらいます。これらを取捨選択して2―3個に絞り、台湾、香港人が見て面白いと感じるものだけを記事にします。先方の意向も汲み取りつつ、台湾、香港人市場を考慮し、台湾、香港人が望む有益な情報に変換していきます。
編集部は契約の台湾人記者も含めて、北海道から九州まで日本各地に全部で30人います。編集部が企画するだけでなく、地方にいる記者が各地域の新鮮な情報も更新しています。
一方でアナリティクスも重視しています。「どこからの流入か」「滞在時間が何分何秒なのか」など、四半期ごとのレポートを出してトライアル&エラーで課題を解決しています。これらの結果、月間PV数は500万を超えています。
営業部は日本人が3人いて、私自身も営業に出ています。地域が持つニーズや素材はそれぞれ違います。やはりオーダーメイドの面が大きいので、営業もヒヤリングして、予算を聞きながら、持ち帰ってすり合わせる。この編集部と営業部の日台共同チームで動ける体制が、我われの強みです。デジタルメディアですが、アナログな関係の構築も必要だと考えています。
――ラーチーゴーではさまざまなサービスの拡充が進んでいます。
今年に入りラーチーゴーの機能を強化しました。3月にはホテル検索システム、4月に体験型ツアー予約システム、5月には航空券予約システムを導入しました。これら機能がラーチーゴーにすべて備わったことで、台北にあるアンテナショップを「旅カフェ」にリニューアルしました。店内にパソコンを設置しているので、日本の情報検索や、ホテル・ツアー・航空券の予約など、「旅カフェ」で寛ぎながら一元的にできます。一方イベントなども開き、ユーザーとリアルでの交流を深める場でもあります。
――体験型ツアー予約サービスで日本からの供給側のメリットなど教えてください。
自治体などは企画・造成・情報発信・予約・効果測定を個々に発注することが多いと思います。我われなら初めから台湾、香港人目線で企画・造成できるうえ、ラーチーゴーでそのまま記事にして情報発信や広告を打つことも可能です。さらにその後の予約数など、効果測定まで一貫して行えます。これは台湾、香港人へ特化したラーチーゴーにしかできません。
今後は地方部のオリジナルツアー造成に力を入れます。酒蔵ツーリズムなどの新たなオリジナルツアーも展開予定です。ただツアーを作っていくなかで安全・安心も徹底します。ランドオペレーターや貸切バスに関して、問題が起きているなか、法令遵守で安全・安心の担保をはかります。
――自治体が訪日外国人を誘客する際の課題などはありますか。
とにかくチラシやパンフレットを配っているだけでは絶対に人はやってこない。東京などでイベントを開いても効果測定しなければ課題解決には至りません。日本の自治体に、ここは非常に課題感を持っています。
――「四国飲食店応援キャンペーン」を実施していますが。
これは四国の飲食店がラーチーゴー内で、1年間無料で情報・クーポンを掲載できるものです。フォームから応募してもらうだけです。台湾、香港人需要の一番は「食」。さらにクーポン券が非常に人気です。クーポンが多く載っていればトラフィックは確実に上がります。我われがコンテンツを作りクーポンを出してもらうことで、訪日外国人の誘客につなげたいと考えています。
――今後の展望をお聞かせ下さい。
まず1つ目はより地方部へ展開し、サービスを拡充していきます。とくに東北は観光復興も視野に入れています。東北6県に宿泊した訪日外国人は昨年、全体の1%に満たない。東北に関心を持ってもらうためコンテンツを充実させ、台湾、香港人の送客に注力していきます。
2つ目は客単価を上げることです。訪日外国人数ばかりに気にしていますが、客単価を上げることは非常に重要だと思います。地方部にもっとお金を落としてもらう。今後は40歳以上の台湾、香港人の富裕層向けに、高価格帯商品サービスを展開していく予定です。
――ありがとうございました。