JTBが「民泊」参入 ― 旅館、旅行会社も新時代に適応を
JTBが百戦錬磨と業務提携し、古民家や空き家といった遊休資産を、宿泊サービスの施設として提供すると発表した。
今年6月9日に、住宅宿泊事業法案(民泊新法)が可決し、来年の施行が予定されているなかで、本格参入となる。
具体的には、JTBグループが提供する訪日外国人旅行者向け予約サイト「JAPANiCAN.com(ジャパニカン・ドット・コム)と、百戦錬磨の公認民泊予約サイト「STAY JAPAN」が連携。9月12日からJAPANiCANサイト内でのアフィリエイト販売をスタートさせた。
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民泊問題での一連の動きでは、旅館業界は猛烈に反発してきた。旅館業法や消防法、建築基準法などさまざまな規制を受ける旅館側は「競争条件が等しくない」と主張する。また、違法民泊が横行しており、新法が施行されてもすべてを取り締まることができるのか、大きな疑念を抱いている。
楽天は、民泊仲介サイト大手のエアビーアンドビーに追いつけ追い越せと民泊仲介業を事業の柱の一つに据える。動きも早い。楽天LIFULL STAYはホームアウェイと民泊事業で業務提携するなど、楽天市場や楽天トラベルに匹敵する規模まで、民泊仲介業を育てていく計画だ。
一方、旅行業最大手のJTBはこれまでの旅館・ホテルとの関係性も重視しながら、動きは慎重だった。だが、周りを見渡すと、エアビーアンドビーは、すでに旅館も民泊物件と同列に取り扱っている。民泊仲介サイト、宿泊予約サイト、旅行会社はそれぞれの領域の垣根を超え、旅館、ホテル、民泊物件などを区分なく取り扱う流れができつつある。
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旅館・ホテルは長年、旅行会社と「車の両輪」として、共同で商品開発を行うなど緊密な関係を築いてきた歴史から、旅行会社が民泊仲介業に本格参入することに、複雑な思いを抱くこともあるかもしれない。
しかし、民泊新法が施行されると、おそらく多くの旅行会社は民泊物件を積極的に販売していくだろう。なぜなら、旅行会社は元来、法に則っていれば、また、安心・安全であれば、あらゆる素材を〝美味しく料理して〟旅行者に提供するのが使命であるからだ。料理の素材は、旅館・ホテルはもちろん、家主不在型のマンションの一室であれ、文化財の古城であっても構わない。
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民泊新法施行に向けて着々と準備を進めている旅館もある。旅館に求められる従来のニーズにはしっかりと対応しながら、旅館のサービス形態の枠では対応しきれなかったニーズに対しては、キッチン付きの空間を提供するなど、〝新たなビジネスチャンス〟と捉える動きもみられる。
「民泊」という言葉は、独り歩きしてきた。
今後、旅館が新たなサービス形態として、住宅宿泊業法に沿った施設を提供するときに「民泊」という〝すでに手垢にまみれてしまった〟呼称は使用しないだろう。きっと、「利用したくなる」ネーミングを見つけるはずだ。旅行者も、実態の分からない家主不在型の施設を利用するのは不安であるが、有名旅館がしっかりと管理している施設であれば、安心して滞在できる。新時代に適応する宿泊サービスは、すでに動き始めている。
(編集長・増田 剛)