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出国税導入か? 巨大な観光産業は大きな発言力を

2017年10月6日
編集部:増田 剛
出国税導入か?
巨大な観光産業は大きな発言力を

 9月28日に召集された臨時国会の冒頭で、衆議院が解散した。2年後の2019年10月1日に予定されている消費税率10%への引き上げで、約2兆円の増収を見込んでいる。その使い道について、国の借金の“穴埋め”分や、社会保障に充てる財源などの変更について「国民に信を問う」と、安倍晋三首相は25日の会見で強調した。
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 観光業界にも、大きな税の問題が持ち上がっている。いわゆる「出国税」だ。
 「次世代の観光立国実現に向けた観光財源のあり方検討会」(座長=山内弘隆・一橋大学大学院商学研究科教授)の第1回会合が9月15日に開かれ、新たな財源確保に向けて議論が始まった。2020年に訪日外国人客数4千万人、30年には6千万人という大きな目標がある。同会合で、観光庁の田村明比古長官は「(目標達成に向け)高次元の施策を進める必要があり、これには一定の財政需要が伴う」との考えを示した。
 では、どのような手法で新たな財政を確保していくのか。
 現在、「出入国」「航空旅行」「宿泊」の3つが選択肢に上がっている。使い道として想定されているのは、訪日プロモーションの推進や、出入国環境整備、受入環境整備などだ。
 一部報道によると、政府は出国時に日本人と外国人に1千円程度を徴収する案を示した。徴収方法としては、航空機や船舶の運賃に上乗せするという。早ければ2018年度にも導入し、年間400―500億円の税収を見込んでいる。
 ただ、どうしても腑に落ちない部分がある。さらなる訪日観光プロモーションや、主に外国人観光客の受入環境整備などの予算を確保するために、日本人が出国する際に、新たに税金を徴収されるという構図が、上手く呑み込めない。「受益者負担」の度合いの高い訪日外国人旅行者に負担を求めるのが自然だと考える。
 外国人旅行者だけに課税することは、「内外無差別」の原則から外れるという。しかし、米国のESTA(電子渡航認証システム)では、対象がビザ免除国からの訪米外国人である。
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 日本旅行業協会(JATA)や全国旅行業協会(ANTA)では、伸び悩む海外旅行を活性化させようと、さまざまな知恵を絞り、努力もしてきた。また、近年の燃油サーチャージ高騰時には海外旅行への大きな逆風のなか、根気強く消費者に説明してきた経緯がある。今回の「出国税」は、「アクセルを踏もうとした矢先に、急ブレーキを掛けられた」との感覚が強いのではないか。
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 訪日外国人観光客数の目標数値を設定している以上、国は、人員ベースで飛躍的な拡大を目指していかなければならない。だが、同時に「質」も求めていくのであれば、日本での観光旅行を快適に過ごしてもらうため、日本人の出国者ではなく訪日外国人に負担を求める。ここは強気でいいと思うのだが。多くの外国人観光客が訪れることによって、地域住民にストレスを与えたり、実際にマナーや質の低下を感じる観光地もある。
 議論はこれから深まっていくと思うが、せいぜい年間200億円程度の観光予算で、16年の訪日外国人旅行消費額3兆7476億円を生み出している。もはや巨大産業である。この実績を背景に、観光産業と行政はより大きな発言力を持つことが大事だ。
(編集長・増田 剛)

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