「道」を楽しむ旅 危険が大きい旅の途中の道路環境
2017年10月11日(水) 配信
秋が訪れ、オートバイのエンジンに火を点けて、少し遠くまで旅をするのが楽しくなってきた。9月は埼玉県の秩父まで走った。10月に入って、東京都の奥多摩湖、そして山梨県の山中湖も行った。最近は早く起きて家を出る。新鮮な朝の空気を全身に感じながら、道路も空いていて気持ちいい。
秩父や奥多摩湖、山中湖には近年足が遠のいていた。久しぶりに訪れてみると、私の記憶の中の印象とは随分かけ離れたものに変貌していた。
神奈川県の津久井湖あたりから山梨県の山中湖付近まで続く道志みち(国道413号)では、オートバイの多さに驚いてしまった。ほぼ信号がないルートが続くため、激しい渋滞に日々苦悩する首都圏のライダーたちにとっては、理想的な道路である。道路沿いにはキャンプ場や温泉施設が散在している。長閑な田園風景や森、適度なワインディングロードもあり、退屈することなくツーリングを楽しむことができる。
道志みちを走る主役はオートバイ。オートバイ10台に対してクルマ1台といった割合だ。途中道幅の狭い個所もあり、クルマでこの道を走ると、少しストレスを感じるかもしれない。
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道すがら、たまたま見知らぬツーリンググループの最後尾に並ぶ格好となり、しばらくそのグループの一団のように走った。これがまたすごく気持ちよかったのである。
私は普段ソロツーリングばかり。10台以上のオートバイがゆったりとした走行ペースで縦に並び、峠道を走る楽しさは、一人ぼっちでは決して味わうことができない楽しさだった。
その集団の先頭が「道の駅どうし」に入っていくと、後続車も続いた。だが、何とその集団は一つのグループではなかった。私を含め、皆バラバラだったのだ。年齢も、性別も違う、偶然に路上で出会った者同士であったが、同じ楽しみ方を共有する者が偶然に集い、〝楽器でハーモニーを奏でる〟ように共鳴し合った瞬間だった。
道の駅どうしは、道志みちの途中に位置するオートバイの〝聖地〟である。広大な駐輪場に次から次にオートバイが入ってきて、軽く休憩して再び道路に向かう。私は小腹が空いていたので150円の熱々のコロッケを食べた。
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道志みちではオートバイだけでなく、ロードバイクに乗る人たちの姿を多く見かけた。
奥多摩湖に向かう道は、オートバイよりもロードバイクの方が圧倒的に多かった。
今夏、北海道の襟裳岬でロードバイクに乗る60代の男性に、「襟裳岬に到達した記念に写真を撮ってくれないか」と頼まれた。ふと見ると、その男性は腕に包帯を巻いていた。痛々しく血が滲んでいる。聞けば、途中のトンネルで転倒して近くの薬局で応急措置をしてもらったのだという。「もし、後ろにトラックが来ていたらと考えると、ぞっとします」と屈託のない笑顔で話した。
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今、日本各地でロードバイクが走りやすい環境づくりが進められている。オートバイやロードバイクの旅では、途中の「道」が何よりも大事である。しかしながら彼らが走る道は、狭い山道であったり、大型トラックが真横を追い抜いたりと、危険が大きい。安心・安全な道路環境の整備も、観光立国に向けた今後の大きな課題の一つである。
(編集長・増田 剛)