道後温泉に新しい温泉施設 9月26日オープン 「道後温泉別館 飛鳥乃湯泉(あすかのゆ)」
2017年10月12日(木) 配信
愛媛県松山市の道後温泉に9月26日、新しい温泉施設「道後温泉別館 飛鳥乃湯泉(あすかのゆ)」がオープンした。西暦596年聖徳太子の来浴伝説が残る飛鳥時代をイメージした湯屋をコンセプトに、源泉かけ流しの温泉が楽しめ、「新たな温泉文化の発信拠点」と位置付ける。施設の概要を紹介する。
□【コンセプト】飛鳥時代イメージの湯屋 松山の伝統・文化発信
これまで道後温泉の公衆浴場は、同温泉のシンボルであり国の重要文化財に指定される「道後温泉本館」と、主に市民向け温泉施設「道後温泉椿の湯」の2カ所あったが、本館は来年秋以降、保存修理工事に入る予定。新たな温泉施設の整備で、引き続きの集客をはかるだけでなく、新たな魅力を創出し、日本最古といわれる道後の温泉文化や歴史を発信する。
飛鳥乃湯泉は、椿の湯の隣接地に市が整備した。地上2階建てで、延べ床面積は約1600平方メートル。徒歩1分の場所にある本館と同規模の広さ。外観は飛鳥時代の建築様式を取り入れ、本瓦葺きの大屋根には一対の「鴟尾(しび)」や道後温泉本館のシンボル「塔屋」を配置。鴟尾は今治の伝統工芸「菊間瓦」で造られ金色に輝く。
館内は開放的な大浴場と、本館にはない露天風呂、皇室専用浴室「又新殿(ゆうしんでん)」を再現した特別浴室、約60畳の大広間休憩室、5つの個室休憩室などを備える。テーマは「愛媛の伝統工芸」と「最先端のアート」のコラボ。
エントランスでは、古来からの和紙と現代技術で誕生した空気を浄化する「ゼオライト和紙」の山門をイメージしたシェードが入浴客を出迎える。正面奥には奈良の世界遺産・薬師寺西塔の再建でも使われた「千年の釘(和釘)」を用い、道後温泉のシンボル、巨大な湯玉を描いた装飾壁が彩られる。男女浴室の入り口には、日本3大絣のひとつ、伊予絣を使った暖簾をかけ、独特の和の風合いを表現し、入浴への期待を高める。
また、12月完成予定で中庭「椿の森」の整備も進む。聖徳太子来浴の際、椿が生い茂る道後温泉のようすを「まるで寿国(理想の国)のようだ」と称えたという伝承にちなみ、椿を生い茂らせ当時のようすを再現する。
□【大浴場・露天風呂】陶板壁画彩る大浴場 情緒豊かな露天風呂
1階にある露天風呂付きの大浴場は男女別に設け、それぞれ50人ほどが入れる広さ。大浴場の壁面は砥部焼として最大級の陶板壁画を飾り、道後にまつわる和歌の風景を表現。男子浴室が霊峰石鎚山、女子浴室は瀬戸内海の風景がモチーフになっている。壁画には小鳥や木々、季節の移り変わりをプロジェクションマッピング(1時間ごと)で表現する映像演出もあり、和歌の世界観のなかで源泉かけ流しの温泉が楽しめる。
露天風呂の壁面には、県のブランド材・媛ひのきを使った「デコラパネル」をダイナミックに設置。まるで自然のなかにいるような色合い、風合い、香りを演出するほか、京都御所や皇居でも使用される菊間瓦の行燈を配し、万葉集の世界観も表現する。
泉質はアルカリ性単純泉。20―55度の温度が異なる18本の源泉を巧みにブレンドし、適温に調整。加温も加水もしていない源泉かけ流しの湯は、肌に優しく、湯治や美肌に最適だ。
□【特別浴室】「又新殿」を再現 湯帳で体験入浴も
2階には、本館にある皇室専用浴室「又新殿」を再現した特別浴室を2部屋備える。本館は入浴できないが、飛鳥乃湯泉では実際に入浴可能。浴室と休憩室からなり、プライベート空間で温泉が楽しめる。休憩室ではお茶菓子が提供される。
特別浴室2では、1本ずつ竹を編み上げた繊細な「伊予簀(いよす)」で御簾を製作し、浴室と休憩室を柔らかくさえぎる。さらに、特別浴室2の浴室の天井には道後を訪れた天皇たちのゆかりの文様を天井画で表現する。
また、「ユカタビラ」とも言われ、その昔一定以上の身分の人が身に付けたと考えられ、浴衣の原型となった昔の浴衣「湯帳(ゆちょう)」を着ての入浴体験もできる。再現した湯帳は、最先端の技術を用い、入浴しても重くなく、湯上がりも冷えにくく、肌が透けにくい仕様。「鳩羽紫色(紫色)」、「薄蘇芳色(桃色)」、「老竹色(緑色)」の3色あり、好きな色を選べる。
□【大広間休憩室・個室休憩室】大広間は雅な雰囲気 5つの個室休憩室も
2階には約60畳の大広間休憩室と、道後温泉にまつわる伝説を表現した5つの個室休憩室を備える。
大広間休憩室と個室休憩室では、本館同様、湯上がりのお茶菓子のおもてなしが受けられる。
個室休憩室と特別浴室で提供されるお茶菓子は、道後温泉を発見したという「白鷺」と、聖徳太子の来浴伝説の「椿」をモチーフにしたものいずれかが提供される。大広間休憩室は松山の伝統菓子「しょうゆもち」を西洋風にアレンジしたお菓子が提供される。
大広間休憩室は国指定の伝統的工芸品である「大洲和紙」と金属箔の融合で生まれた「ギルディング和紙」によるシェードと照明が空間を彩り、床の間には飛鳥乃湯泉が描かれた「新道後温泉絵図」が展示される。
また、聖徳太子が編み方を伝授したという伝説が残る、竹ひごを不規則に抜いて仕上げる「やちゃら編み」の伊予竹細工の行燈も並べ、雅な雰囲気を演出する。
個室休憩室は、「白鷺の間」「玉之石の間」「椿の間」「行宮(かりみや)の間」「湯桁の間」の5つ。県内の工芸作家らの作品で彩られる室内は、それぞれ内装が異なる。
このうち、「白鷺の間」は繊細な伊予水引で、清らかな白鷺伝説を表現。「椿の間」は、先に染めた糸を一本一本組み合わせることでフルカラーの絵画などを表現できる世界初のタオル織物、今治タオルで作った椿の花が空間を彩る。「湯桁の間」は、西条だんじり彫刻で豪華絢爛な空間を創出する。