「井川今日子のおもてなし接客術(27)」 残念な接客
2017年10月14日(土)配信
先日、ひさびさに都内のレストランにフレンチを食べに行きましたが、設備と料理に接客が追い付いていないのではないか、と残念に思う経験をしました。料理長の経歴は華々しく、ミシュランの星が付くレストランです。ある料理評論家が料理も接客もべた褒めしていたので、とても楽しみでした。
ホールスタッフは皆流れるような接客をしており、さすがだと感心しました。料理説明も、こちらが質問したくなるような食材や調理法は予め説明するなど、安定した対応を見せてもらいました。料理は器遣いや盛付もさることながら、味もとても美味しく満足の行くものでした。
それにも関わらず何が残念だったかと言うと、おもてなしが欠けているということでした。
会計の際に「お食事はいかがでしたか」と声を掛けられたので「美味しかったです」と言うと、「ありがとうございます」と返されたものの、その後の会話が続きません。
たまらず「こちらのお店は何年位になるのですか」と質問してみると、少し考えて「7年目になります」と返ってきましたが、やはりその後が続かず、まったく盛り上がらない(つまらない)会話となってしまいました。
初めから、こちらに興味が無く、楽しませようという意識が無いことが見え透いてしまいます。例えば「何か印象的なものはございましたか」と一言返せれば、少なくとも会話を続けることはできます。
あるいは「こちらの開業は7年になりますが、それまで当店のシェフは〇〇で料理長を務めておりました」と、1つでもエピソードを話すだけで、お客様に質問した価値を感じさせることができ、満足度が高まるはずです。
帰り際に「ただ今、シェフがごあいさつにまいります」との案内があり、コック服を来たシェフが現れました。
「ありがとうございます」との声に、「美味しくいただきました」と御礼を言うと、シェフは再度「ありがとうございます」と返すだけ。この対応にもがっかりでした。これだけなら別に出てこなくても良いのでは、というのが率直な感想です。
料理長にお目にかかれること自体は、光栄なことだと思うのですが、形式的にでも「どちらからお出でですか」など、お客様に関心を示す一言が掛けられれば、どれだけ印象が違うだろうと思います。
冒頭でも説明したように、スタッフはみんな、淀みない接客ができており、不満があるかと聞かれればそうではありません。
また、お店の内装はお洒落で綺麗でしたし、趣向を凝らした料理は、見た目にも味にもとても満足でした。
一方で、せっかくこのようにレベルの高いものを提供できているのだから、接客もそれに合わせられたら、さらに良くなるだろうに、とお節介ながらも、残念に思ったできごとでした。
(おもてなしコンサルタント 井川 今日子 )
コラムニスト紹介
おもてなしコンサルタント 井川 今日子 氏
大学で観光学を学んだ後、船井総合研究所を経て、10年に観光文化研究所入社。全国の旅館や観光協会を中心に、女性の感性を活かした集客・固定客化支援で活躍中。商品戦略や販売促進、現場接客サービスなど多岐にわたり提案。