「提言!これからの日本観光」地方再生を目指して
2017年10月14日(土) 配信
外国からの観光客は年間2千万人を超え、さらに増加が続いている。観光庁の調査によれば、2016年外国人延べ宿泊人数は6938万人泊に達したという。最近の傾向として、従来の三大都市圏内各都府県(東京、神奈川、埼玉、千葉、愛知、京都、大阪、兵庫)以外の各地にも宿泊先が広がっており、地方経済再生のために外国人観光客への期待が高まりつつある。確かに16年には三大都市圏の外国人宿泊客が前年比138万人の増加だったのに対し、他道県の伸びは238万人増と増加人数で上回っている。しかし、この数字だけで地方再生につながると期待するのは尚早だ。
それは三大都市圏で外国人が宿泊を希望するホテルが満室のためやむなく他の地域などのホテルに泊まらざるを得なかった人が多いからである。
東京など大都市圏のホテル客室稼働率が年間平均80%を超え、他地域との差が広がっている。また、最近岐阜などで聞いた話では外国人客が増えたが、夜に到着して泊まるだけで翌早朝、目的地に向かい岐阜市内では観光しない人が多いとのことであった。
次に考えられるのは外国人観光客のなかでリピーター客が増えたことである。16年のリピーター客の比率は訪日2回以上の人で62%に達しているのもこのことを物語る。これらの人々も単に違ったところに泊まってみたいだけで、知名度の低い地元そのものの観光には興味を示さないことが多いという。せっかく泊まってくれるのであるからこれらの人をその地域の観光客にもなってもらわねばならない。地方の魅力ある文化や食、風物などを適切なストーリーのもとで紹介することや地元で造成した独自独特の観光ミニ商品を地方ホテルなどで販売すること(旅行業法改正でこのような行為が可能となった)など地域を挙げて情報発信し観光行動に誘客しなければ、宿泊客数の増だけでは地方再生にはつながらないと思う。
一方、都市のホテルが満杯なのに大都市圏でも和風旅館の客室稼働率は50%そこそこというアンバランスが見受けられる。これは旅館の一部に残る古い経営体質(1泊2食付契約の固守、外国人敬遠など)が外国人宿泊客の利用を妨げているからではなかろうか。外国人、とくに欧米人も和風旅館に泊まりたい人も多いのに、である。このため観光客が増加する一方で、旅館は廃業転業などで減少が止まらない。旅館の中にはそこへの宿泊自体が観光資源となるようなところも多いだけに残念なことである。外国人観光客の宿泊先をめぐる残念なアンバランスが観光立国への歩みの足を引っ張っているように思われてならない。旅館の経営改革(経営体制や契約方式なども含めて)が急務と言えよう。また、外国人客の増加してきた地域も数字だけで一喜一憂することなく、真の国際観光を目指して、地域から情報発信して誘客するという「着地型観光」の動きを定着させ地方経済再生に結びつけるよう努力が求められている。
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