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「島川崇の観光・日本再生の道 第79回」亡国の英語重視

2017年10月21日
編集部

2017年10月21日(土) 配信

熱意や専門知識よりも、英語偏重が進む大学教育

 先月、英語重視で人材採用した結果、自己中心的な人材が多くなり、結果的に短期で退職する割合が増加したのではないかとの問題提起をして、大きな反響を呼んだ。発行前はもっと反発が多いかなと覚悟していたのだが、予想に反してその視点に対しての共感を多くいただき、逆の意味で驚いている。

 経済界からの強い要請で、いま大学は専門科目も英語で教えろという文部科学省からの圧力が日増しに強くなってきた。それがいまおかしな方向に進み始めている。私の勤めている東洋大学では、教員採用の際、模擬講義を課すのだが、それを英語でやれとの指令が来た。

 実際やってみると、学生に対して一生懸命対応してくれる先生よりも、こなれた英語を使いこなす先生のほうがどうしても点数が高くなってしまう。また、文科省に報告するポイントになっているようなのだが、外国人教員の比率を高めよとの圧力も強くなっており、外国人が有利な状況ができつつある。こんなことでは真に学生に対して親身になって対応する教員が採用できないので、私は学科長という立場にありながらその大きな流れにできる限りの抵抗を試みている。

 他の大学の話だが、同じように英語での専門科目の講義を求められたことに対して、経済学の分野なのに、経済学部を卒業しただけで、経済学の学術業績が何もない教員で英語だけがペラペラな人が採用されたそうである。これが名の通ったまともな大学で起こっていることである。

 もうこうなったら大学は語学学校扱いである。

 大学がこんな状態で、しかも英語さえできたら簡単に入学できてしまう入試があるもんだから、高校側も、数学や理科はそっちのけで、英語ばかりをやってくる学校が増えてきた。かつてはそれでも英語の点数が努力の尺度になっていたが、高校3年間、場合によっては中高一貫6年間を英語ばかりに費やして、英語はペラペラになったが、中身もペラペラでスカスカという学生がここ最近増えてきた。英語のスコアが努力を測る尺度にならなくなってきた。

 また、留学も昔は相当な覚悟を持って渡航していたものだが、いまは楽して英語のスコアを上げたいから留学を希望する学生ばかりになってきた。渡航しても日本人が現地でコーディネートをしてくれる。なにも不自由なく留学することができる。 

 こんな中身がなくて英語だけが話せる人材を採用していたのでは、すぐ辞めて当然。この業界が発展するわけがない。

 苦手なことからも逃げず、分からないことにも自分の持つ知識を総動員して食らいついていくといった気概は、こんな現代の英語教育からは身につくはずもない。

(東洋大学国際観光学科長・教授 島川崇)

コラムニスト紹介 

島川 崇 氏

東洋大学国際観光学科長・教授 島川 崇 氏

1970年愛媛県松山市生まれ。国際基督教大学卒。日本航空株式会社、財団法人松下政経塾、ロンドンメトロポリタン大学院MBA(Tourism & Hospitality)修了。韓国観光公社ソウル本社日本部客員研究員、株式会社日本総合研究所、東北福祉大学総合マネジメント学部を経て、現在、東洋大学国際観光学部国際観光学科長・教授。教員の傍ら、PHP総合研究所リサーチフェロー、藤沢市観光アドバイザー等を歴任。東京工業大学大学院情報理工学研究科博士後期課程満期退学。観光で被災地の復興に貢献する枠組みの構築を現在のテーマとしている。

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