佐賀県×D&DEPARTMENT 「シェアトラベル佐賀」で、観光を通じた交流と体験促す
2017年10月24日(火) 配信
アートツーリズムが進化している。ディアンドデパートメント(ナガオカケンメイ会長)と佐賀県がこのほど、旅行商品「シェアトラベル佐賀」の販売を始めた。ローカルフードや地酒など、佐賀の「地域らしさ」を体験できる旅行商品となった。ユーザーはWebサイトから申し込み、ほかの申込者とタクシーをシェアして地域を巡る。
現地で立ち寄るのは飲食店や志田・有田焼の窯元など。施設をピックアップしたのは、同社会長で「d design travel」編集長を務めるナガオカケンメイ氏とそのスタッフら。同氏は2000年、ロングライフデザインをテーマにショップ「D&DEPARTMENT PROJECT」を旗揚げ、日本のデザイン界を牽引してきた。食や観光に対する造詣も深く、参加者は、同氏らが滞在を通じて発見した、佐賀のオススメを追体験することとなる。
□「交流」と「体験」を提供するアートツーリズムを身近に
2015年、第1回ジャパン・ツーリズムアワードの大賞に瀬戸内国際芸術祭実行委員会が選出され、アートを通じた地域おこしに注目が集まった。同委員会は、香川県の直島を中心にアートフェスティバル「瀬戸内国際芸術祭」を企画。香川県知事の浜田恵造氏(当時)が委員長を務め、ベネッセホールディングス最高顧問の福武總一郎氏(当時)が総合プロデューサーとして、せとうちの島々を結ぶ広域連携イベントを実施した。
2013年に実施された「瀬戸内国際芸術祭2013」の総来場者数は約107万人。100億円を超える経済波及効果があったとされ、移住の増加も確認されている。
当時注目されたのは、「交流」と「体験」。直島町観光協会をはじめとした地域住民のほか、香川大学の学生がカフェを開くなど、地域が一体となった受入体制を敷くことで、地域と来訪者だけでなく、地域内の世代間交流も実現している。
住民とアーティストのコミュニケーションもはかられ、アート作品に住民が参加する取り組みも行なわれた。アーティストにとって、住民との交流は、異国における体験にほかならない。開催地である直島でしか味わえない感動体験が、さらなる来訪者や移住者の創出する基礎となったといえる。
飲食店などに立ち寄り、関係を深めたうえで、旅行商品として提供する仕組みは、地域住民と来訪者の負担を減らしつつ、交流促進を実現するもの。飲食店での交流はアート体験とは言い難いかもしれないが、窯元見学や、和酒専門バーでのひとときは、自分と向き合うのにぴったりな時間といえ、アート体験に通じる発見や気づきを得ることができる。ディアンドデパートメントと佐賀県が提供する旅行商品「シェアトラベル佐賀」は、アートツーリズムが目指す「交流」と「体験」をより身近にする取り組みなのだ。
□2カ月の滞在通じ、ナガオカ氏らが立ち寄り先をピックアップ
「“d design travel SAGA”は、その土地を巡るための教科書。人気のスポットを紹介するのではなく、その土地(地域)らしさを満載した内容となっている 」と、書籍について語るナガオカケンメイ氏。旅行商品「シェアトラベル佐賀」で立ち寄る施設は同書籍制作時、佐賀に2カ月滞在してピックアップしたものだ。
コースは、「佐賀のロングライフデザイン定番旅」と「佐賀の郷土の味を巡る旅」、「分かりやすい佐賀の酒旅」、「佐賀のロングライフデザインをぎゅっと圧縮お得旅」の5つ。料金はそれぞれ、5万2千円~10万円ほど。料金には、九州佐賀国際空港着の航空券も含まれている。
至れり尽くせりのツアーかと思いきや、残りの料金は、1泊夕朝食込みの宿泊代と移動で必須のチャータータクシー代となる。立ち寄り先はしっかり用意されているものの、そこで何を食べ、買い、体験するのかは自分で決めなくてはならない。ナガオカ氏らが教えてくれることは限られており、どのようにして楽しむかという自由がユーザーには残されている。
□「交流」と「体験」をサポートしてくれる「シェアトラベル佐賀」
移動するタクシー内では、ナガオカケンメイ氏による音声ガイドが流れ、到着先の見どころを教えてくれる。もちろん、誰もが知っているような観光スポットではなく、ユーザーが向かうのはあくまで、地域ならではの美味やおもてなしを提供する施設だ。
滞在中、施設の主人やスタッフらと交流をはかってきたナガオカ氏。飲食店などの施設を訪れたユーザーは、ナガオカ氏の経験を辿ることとなる。主人やスタッフとの対話を通じ、地域と温かい関係を築いてきたナガオカ氏が、どのようなコトに興味関心を寄せたのかを知ることも、「シェアトラベル佐賀」ならではの楽しみだ。
旅先での「交流」と「体験」は、地域と来訪者双方にとってメリットがある。施設をはじめとした地域事業者や住民は消費額増や移住者の増加を期待でき、来訪者は平生得られない特別な経験を通じた新しい知見の獲得やリフレッシュを望める。
一方、「入ってみたいが入れるかどうか分からない」、「声を掛けてみたいが、仕事の邪魔にならないか?」など、旅上級者でなくてはつい躊躇してしまうシーンも旅にはつきもの。「シェアトラベル佐賀」なら、これから旅に出る「あなた」のために、ナガオカケンメイ氏や「d design travel」編集部のスタッフが事前にアポイントメントを取ってくれているため、安心して旅先での「交流」と「体験」にどっぷり浸かれる。同じタクシーをシェアする同行者は、旅先で出会う旅人と考えれば良い。
書籍「d design travel SAGA」を開けば、「ちょっと長めの編集後記」も読める。コース選択に役立つ記事も多く、手元に置いて下記Webサイトをチェックする際の参考となる。