“本物の日本を守って” リピーター対策が必要 『ズームジャポン』ルブラン編集長
2017年11月1日(水) 配信
本紙は6月21日号から、フランスの日本専門情報誌「ZOOM JAPON(ズーム・ジャポン)」の特集記事の翻訳やフランスの最新情報などを紹介している。同誌創刊者で編集長のクロード・ルブラン氏は、日本を熟知する社会派ジャーナリストとして広く知られ、英国やイタリア、スペインでも日本の情報誌を展開している。ルブラン氏がこのほど来日し、日本の観光施策に対し「本物の日本を守り、インバウンドのリピーター対策をすることが必要」と意見した。
【飯塚 小牧】
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□日本は「大きな国」
日本はヨーロッパ人にとってとても「大きな国」です。長い時間で培った歴史・文化、景観があり、それは北海道から沖縄までとても異なります。ヨーロッパ人にとっては面白いデスティネーションです。
ヨーロッパから日本を訪れる人たちは初めての人が多く、一般的に東京と京都、広島などを周ります。しかし、今、京都は私から見ると「ダメ」になっています。ビジネスに走りすぎて、本物の日本文化が感じられなくなっている。例えば京都にはさまざまな国の人が大勢訪れていて、彼らは着物を着て清水寺の前で写真を撮っていますが、その着物が浴衣のようなペラペラのもので美しくないのです。京都は最も日本文化を感じられる街のはずですが「日本はどこ?」と思いました。とても危惧しています。
その点、今回私が訪れた大津市(滋賀県)は、パーフェクトです。京都から電車で10分という距離ですが本物の日本がありました。
私にとって大切なのは「本物の日本を守ること」です。北海道や東北、九州など各地の小さな田舎に残っている日本のルーツを忘れないでほしいのです。
□長期的な施策を
観光庁や日本政府観光局(JNTO)のインバウンド対策は、リピーターに対する施策がみえてきません。これが大きな問題です。観光は日本にとって宝です。守ることが大切で、これにはマスツーリズムではダメです。数字目標だけを追いかけて初めての旅行者にばかり注力するのではなく、長期的に考えていかなければなりません。
今、ポップカルチャーなどで日本に行きたい人が増え、ブームになっていますが、流行は明日になればなくなります。初めての人は着物を着て写真を撮って、SNS(交流サイト)にアップするだけ。日本文化は関係なく10分で終わりです。
しかし、リピーターは日本への興味が強い人で、日本の将来のために最も必要な人です。フランスは世界で最も観光客が多く、リピーターを取り込んでいますが、これは本物の生活を紹介しているからです。日本も同じです。我われは「おもてなし」ではない、本物の文化や生活が見たい。寿司や天ぷらだけではなく、家庭料理もB級グルメも体験したいのです。日本人観光客と同じ体験を求めています。ヨーロッパからくる人たちは主にショッピングを目的にはしていません。遠い国から「知らない国を発見したい」という気持ちでやってくるのです。そこで日本の本物の“ソウル”を感じればリピーターとして戻ってきます。
□日本文化に触れ合う
旅館に泊まることは食べ物や地域の精神、景観など日本文化を知るために重要な経験だと思います。料金の面などから毎日泊まることはないですが、ヨーロッパの観光客はホテルや旅館、ゲストハウスなど滞在中に宿を組み合わせて旅をすることが多いです。
また、日本の精神に触れるにはローカル線に乗ることが最適です。私は青森の五能線が好きですが、地域の人と自然に交流することができます。
□日本のすべてを紹介
国は人や社会、政治、経済、スポーツといろいろな面から成り立っています。2010年にズームジャポンを創刊したとき、日本のすべての問題を紹介していくことを理念としました。読者が日本を理解することで、国の間の交流はしやすくなります。ヨーロッパ人がその国に行きたいと思うには、国を理解することが必要です。観光の情報は付属に過ぎません。
前回、日本の貧困問題を特集しました。私が初めて日本に来たのは34年前ですが、そのときと日本の現状はまったく違います。今は貧困や高齢化などの問題がありますが、それをありのまま紹介することが重要だと思います。私は日本が大好きだからこそ、負の部分も発信していきたいです。今後はドイツやロシアなどヨーロッパの他の国にも媒体を広げていきたいと考えています。