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「提言!これからの日本観光」「世界観光倫理憲章」と「産業観光」

2017年11月11日
編集部

2017年11月11日(土) 配信

産業観光の取組みが各地で進む

 2005年、日本で万国博(愛・地球博)が開催されたのを機に日本の得意技であり、また万国博のテーマのひとつである産業技術“ものづくりのわざ”を観光資源とした「産業観光」が各地で進み始めた。

 自治体観光団体や経済団体などが、その主導者を務め、筆者も微力ながらそのお手伝いをすることになった。しかし、取り組んでみて思い知らされたのは観光に対して無関心な人々があまりにも多いこと、また観光について偏見誤解を持っている人も少なくないことであった。いわば観光の社会的地位が低いことを痛感させられた。「ものづくりに集中しているから観光などやっていられない」という財界人さえ少なくなかった。ある経済団体の幹部からは、「この団体は観光に協力できる構造にはなっていない…」とまで極言されたほどである。要するに観光は「ただの遊び」にすぎず、生産の対極にある単なる「消費行動」だと誤解する人があまりにも多く、失望した思い出がある。しかし、国がそのころから「観光立国」を国策の一つに掲げ、積極的な取り組みを呼び掛け始めた。そしてそれを受けて地方自治体などの公的機関が観光ビジョンを作り、そのなかで「産業観光」を取り上げるところも出てきた。「産業観光」も何とかニューツーリズムのひとつの分野として立ち上がることができ、地域、温度差はあるものの、地域の観光の中核として定着するところもみられるようになった。

 ところで、先日開催された「ツーリズムEXPOジャパン」の席上、この「産業観光」が「ジャパンツーリズムアワード」の「UNWTO部門賞」を受賞した。日本観光振興協会(山口範雄会長)の全国産業観光推進協議会による「産業観光」の推進が表彰を受けたのである。この賞は「国連世界観光機関」(UNWTO)が発出した世界の観光開発及び発展の規範ともいうべき「世界観光倫理憲章」の趣旨に沿った観光を進めている団体にEXPO組織委員会から贈られる賞である。「倫理憲章」は「観光は地域社会に密着した行動であるとともにその利益が国民経済のなかで共有され持続可能な世界観光の秩序の実現をはかるべき」とその理念を前文に掲げている。

 今回の「産業観光」の受賞は「産業観光」が地域密着型(着地型)の観光として出発したこと、地域社会にその効果を広く還元しつつ持続的活動としての展開など評価されたものと言えよう。「産業観光」が観光の国際規範である「世界倫理憲章」の趣旨に沿う観光であることが評価され、いわば国際的に認知されたことは関係者にとって感慨深い。一方、持続的観光として続けられてきたことへの評価も受賞理由の一つであったことは関係者にとって今後の期待が示されたとして、重く受け止めなければならない。「産業観光」への評価を喜びつつもこのような重い期待に応えるべく関係者はその決意を、受賞を機に新たにしなければならないと考えている。

コラムニスト紹介

須田 寛
日本商工会議所観光委員会共同委員長
須田 寬 氏
 
 
 
 
 

 

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