全国から1841人が参加 観光地以外の観光模索 全国商工会議所観光振興大会
2017年11月21日(火) 配信
既存の観光地ではない都市での観光の可能性探る――。日本商工会議所は前橋商工会議所との共催で、11月9―11日まで、群馬県前橋市で「全国商工会議所観光振興大会2017」を開いた。全国515商工会議所のうち、北は北海道、南は沖縄まで234商工会議所から1841人が参加。「見つけよう観光、磨こう観光~地域から新しい風を吹かせ~」をテーマに、地域に眠る観光素材の生かし方などを模索した。
10日の全体会議で日商の三村明夫会頭は「観光は関連する産業の裾野が広く、どこの地域でも取り組める地方創生の有効な切り札。豊富で多様な観光資源を、誇りを持って磨き上げ、その価値を分かりやすく発信することが大切だ」と今回のテーマの実践を訴えた。
大会では、9日の分科会と全体交流会から、10日の全体会議、エクスカーションとさまざまなプログラムを行った。そのなかの基調講演で、東洋文化研究家で古民家の再生などを行っているアレックス・カー氏が登壇。観光客は何を求めているのかをしっかり見極め、景観を大切にすることの重要性を強調した。「看板1つでも景観は壊れてしまう。観光は国内でも世界でも競争産業」と魅力を損なえば競争に負けてしまうと警告。仏教の教え「明珠在掌(めいじゅたなごころにあり)」を例に、地域にある魅力を見直し大切にしてほしいと訴えた。
また、全体会議内で17年度「全国商工会議所きらり輝き観光振興大賞」の表彰を実施。大賞は長野県・上田商工会議所の「NHK大河ドラマ『真田丸』放送を最大限に活用した地域振興事業」が受賞した。同商工会議所は09年から、大河ドラマ実現に向け署名活動などを展開。16年の「真田丸」放送効果による同年の上田市の消費総額は67億9千万円に上った。現在は、ゆかりの地の新潟県・上越商工会議所と山梨県・甲府商工会議所と観光の「三国同盟」を締結し、事業を進めている。
大賞以下は次の通り。
【振興賞】新庄商工会議所(山形県)▽鳥取商工会議所(鳥取県)【観光立“地域”特別賞】函館商工会議所(北海道)▽長浜商工会議所(滋賀県)【奨励賞・単会】美幌商工会議所(北海道)▽浜松商工会議所(静岡県)▽熊野商工会議所(三重県)▽柳井商工会議所(山口県)▽西条商工会議所(愛媛県)【奨励賞・広域連携】登別商工会議所・室蘭商工会議所・伊達商工会議所(北海道)▽桐生商工会議所(群馬県)・太田商工会議所(同)・館林商工会議所(同)・足利商工会議所(栃木県)・佐野商工会議所(同)
◇
□日本人客増は4割に 515商工会議所に観光調査
観光振興大会に先立ち、日本商工会議所は11月9日に会見を開き、7月に全国の515商工会議所へ調査した2016年度の観光振興の取り組み状況を報告した。これによると、日本人の観光客数が増えていると答えた商工会議所は40・0%となった。外国人観光客が増加していると答えたのは48・1%。
地区内人口の規模別にみると、日本人観光客が増えていると答えた割合が最も高かったのは「5万人以上10万人未満」の都市の商工会議所。中小都市への回遊も増えていることがうかがえる。ブロック別では、東北が51・1%と最も高く、中国も49・0%と増加が目立った。
外国人観光客が増えていると答えた商工会議所は前回から7・4ポイント減少し、伸びはゆるやかになっている。ブロック別にみると、中国は60・8%が増えていると答え、最も高かった。東北も57・8%と高く、前回から20ポイント増と大幅に伸びた。関東と東海、関西は前回から減少し、ゴールデンルートからの分散もみられる。
17年度に観光振興に取り組んだ商工会議所は79・8%と前回から1・9ポイント減少。取り組まなかった商工会議所は「取り組むための体制ができていない」「十分な予算がない」「興味を引く観光資源が見つからない」という理由が多かった。
一方、調査から浮かび上がった課題は地域における旅行者への安全確保の対応や、観光サービス関連事業者の人手・人材不足、観光情報の発信など。これに対し、観光委員会の須田寛共同委員長は、「観光シーズンに大規模な震災が発生した場合、多くの帰宅困難者が出るが、地域の対策は進んでいない。いざというときには、地域や国の信用失墜にもなる」と早急な対応が必要だとした。
また、人手・人材不足については「観光業界は老若男女が活躍できる業界だ。今後の人口減少でいずれは仕方ないが、今人手不足というのは時期尚早。工夫不足ではないか」と指摘した。