観光促進税 身近な人たちが旅行しやすい環境に
2017年11月21日(火) 配信
新たな観光財源の確保を目的に、日本を出国するたびに1人当たり1千円を徴収することが、11月16日に開かれた自由民主党の観光立国調査会で決議された。「出国税」ではなく、名称は「観光促進税」となるようだ。日本経済新聞の11月17日付の報道によると、「自民党内に『出国税という名称はイメージが良くない』との声があったため」とされている。観光庁は「日本人海外旅行者も受益するような使途を検討する」と説明したという。
外国人観光客に対しては、消費税を免除する免税店の整備を行っている。また10月から酒税の免除制度もスタートした。レンタカーを利用した高速道路も、JRも外国人旅行者に割安のパスが存在する。
観光庁には外国人旅行者への受入整備を進めることが、日本人の旅行者にも旅行をしやすい環境になるとの考えが基本姿勢にある。しかし、それにしても日本人の国内旅行活性化への取り組みの影の薄さはどうしたものだろうか。
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エアビーアンドビーは独占禁止法違反の疑いで、同社の日本法人が立入検査された。宿泊業界が反発する中で来年6月15日には住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行される。しかし、残念なことに民泊を推進していく大手民泊仲介サイトが遵法精神から離れている。
“ヤミ民泊”も横行している。しっかりと取り締まりができるのだろうか。無許可営業者の罰金上限の3万円を100万円に引き上げるなど、旅館業法の一部改正の法律案の成立も見通しが立たない。多くの国民も不安に思っている。
民泊関連での犯罪も全国各地から聞こえてくる。脱法行為によって莫大な利益を得ている悪徳業者が儲かり、遵法精神に則った旅館やホテルなどの観光業界が不利益を被る社会になっては、観光立国とは言えない。
新たな税金を徴収するのなら、その使途として、国内の違法行為を本気で取り締まるために使われた方が余程、説得力がある。
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観光促進税で400億円規模の税収が見込まれるが、今後、海外に向けた訪日誘客への宣伝事業に巨額の税金を投入する必要性があるのだろうか。また、外国人観光客への多言語化などの取り組みも、過剰な状況はないだろうか。
今はスマートフォンのアプリも充実しているし、通訳の機器も小型化し、高性能になっている。過度な多言語化への税金投入よりも、まだまだ進んでいない国内観光における環境整備もあるはずだ。訪日外国人数の数値目標に目が奪われ、本当に整備が必要な部分が見えなくなっては、本末転倒である。
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先日、神奈川県の三浦半島をオートバイで走り、途中の公共の休憩場所でひと休みした。すると、そこで車イスの青年がトイレの中から腹這いになって出てくるのを目にした。トイレが狭いため車イスを入れることができなかったのだ。母と青年の2人だけのドライブ旅行の途中なのだろう。少し遠くで年老いた母親は青年が男性トイレの中で車イスに乗り込むのを見守っていた。冬間近の寒空の中、私は胸が潰れそうになった。
観光促進税の使い方はまだ定かではない。きらびやかな海外宣伝もいいが、足元の身近な人たちがもう少し旅行しやすい環境をつくれないかと、心から思った。
(編集長・増田 剛)