IoTと観光を考える 見逃し市場発掘へ “IoTはスマホ”身近に捉える
2017年12月1日(金) 配信
11月9日に行われた全国商工会議所観光振興大会=既報=では「地域の宝を生かせ! ~地方都市の底力~」をテーマに4つの分科会が開かれた。「IoTと観光」では、見逃し市場の発掘などIoTを活用した新たな観光誘客を模索した。パネリストからは「IoTはスマートフォン」と示され、身近に、シンプルに考えることや、使うこと自体を目的にせず、あくまでツールとして捉えるべきなどの意見が出された。
【飯塚 小牧】
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IoTとは「Internet of Things」の略で、「モノのインターネット」といわれる。ありとあらゆるものがインターネットにつながることを指し、観光業でも活用の動きが広がっている。
分科会では前段として、日本電信電話(NTT)新ビジネス推進室地域創生担当統括部長の大西佐知子氏が、IoTやAI(人工知能)を観光、地域にどのように活用できるのか、どのような新しい風を吹かせられるかなどを語った。
大西氏は、「スマートフォンを利用するのが大きなポイント。例えば中国人観光客がどこで何を買っているのかという実態がスマホで可視化できる」と紹介した。新たな観光資源を発掘できるほか、売れないと思っていた商品が実は人気だったというような見逃し市場を発見できる。「可視化したニーズをプロモーションし、着地側のおもてなしに役立てられるという一連の流れができ、PDCAサイクルを潤滑に回すことができる」と、データに基づく^tPRは効果が大きいとした。
具体例として、北海道札幌市の事例を提示。台湾人旅行者が中島公園に1時間ほど滞在しているデータから、SNS(交流サイト)で調べたところ、無料のスキーレンタルがあり、雪が珍しい台湾人に人気を博していた。「理由を探るのはSNSでのつぶやきが便利。なぜそこにいるのか、困っていることは何かが分かる」。
パネルディスカッションでは、JTB国内事業本部法人事業部観光戦略チーム観光立国推進マネージャー・日本版DMOサポート室室長の山下真輝氏が、IoTのメリットとして「合意形成をはかるために必要なもの。今まで感覚的に行っていたことがデータで裏付けられる」と語った。
また、内閣官房日本経済再生総合事務局参事官の川村尚永氏は「人手をかけずに、自動で集まっている既存データを組み合わせて、潜在的な需要を探すことがIoTの肝ではないか」と語った。
他方、山下氏は会場参加者からの質問に返答し、観光地ではない地域での観光の取り組み方をアドバイスした。「大切なのはプロセス。観光はさまざまな産業の人が関われる分野で、異業種交流が不可欠になる」と言及。観光はまちが抱える諸課題の解決の糸口になると示し、さまざまな人が意見を出し合う場を設けることに意義があるとした。また、そのまち自体が観光のデスティネーションになる必要はなく、周辺地域とのポジショニングを考え、連携することが有効だとした。