水上観光船 脚光浴び注目度が高まることを期待
2017年12月1日(金) 配信
観光産業といえば、ホテルや旅館などの宿泊施設、旅行会社や大規模なテーマパークなどを真っ先に思い浮かべるかもしれない。旅の移動には欠かせない航空会社や鉄道会社、観光バス会社なども、観光産業の重要なポジションを占めている。
ドライブインなどの土産物施設や飲食店も、観光産業の主役である。視点を変えると、バッグやカメラ、自転車などのメーカーだって観光との関わりは密接である。「観光は裾野が広い産業だ」と言われるが、実際、本当に広い。観光とまったく関係がない業種を探すことは、非常に困難である。
観光産業のど真ん中に存在し、とても愛される存在でありながら、これまで十分に脚光を浴びて来なかった業種がある。それは、水上観光船だ。
業界専門紙の記者として数えきれないほど、観光関係者が集うパーティーなどにも出てきた。宿泊施設や旅行会社、運輸機関などに対する期待の言葉、日ごろの努力への賛辞や貢献への謝辞は多く耳にしたが、水上観光船への言及は少なかったというのが率直な印象である。
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島国で海に囲まれ、自然豊かな日本には、さまざまな水上観光船がある。
海辺には多島美を満喫する島めぐり観光船や、湾内クルーズなどが多く存在する。工場夜景を海上から眺めるコースも全国各地にある。南の島では、サンゴ礁や熱帯魚の群れをガラス越しに眺めることができるグラスボートもある。
景勝地として広く認知されている湖には、遊覧船はワンセットだ。湖上のひとときをのんびりと優雅に過ごすための遊覧船が運航している。
川下りも人気である。桜や新緑、紅葉の深い渓谷を船でゆっくりと流れていく景色を眺めるのは、日本の深部に秘する美を堪能できる贅沢な旅である。
また、城下町など歴史的な古い町並みのお堀には、船頭さんが舟唄を気持ちよさそうに唄いながら、巧みな竿さばきで、町並みを案内するツアーも名物となっている。
そして最近は、水陸両用船が脚光を浴びている。
海や湖、川、お堀でもそうだが、水上から眺める体験は、歩く旅とはひと味違う。旅の思い出を重層的に深める力を有している。
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豪華クルーズ船による船旅は多くの人の憧れだ。しかし、現実には参加者はまだまだ一部の人たちに限られている。
一方、日本各地に存在する旅先での水上観光船は、気軽に非日常を楽しむことができ、多くの人々に親しまれている。近年はインバウンドの拡大で、水上観光船に外国人観光客が楽しそうに乗船する姿もしばしば目にするようになった。
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旅行新聞新社は今年初めて、旅のプロである旅行会社に優れた「水上観光船」を選んでもらう第1回「プロが選ぶ水上観光船30選」を発表する。10月に全国の旅行会社から投票を受け付けており、12月11日に本紙ホームページで発表する。
来年1月23日には、東京・新宿の京王プラザホテルで第43回「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」などとともに、表彰式を開催する。国土交通省と観光庁も後援している。今後、注目度がますます高まることを期待している。本紙も観光業界の専門紙として、全国の水上観光船を盛り上げていきたいと思う。
(編集長・増田 剛)