“値付け”課題に、企業らからヒヤリング 観光庁
2017年12月19日(火) 配信
観光庁は12月19日に東京・国立新美術館で、第3回「楽しい国 日本」を開いた。日本文化・生活体験や電子チケットなどのヒヤリングを実施。先進的な取り組みや問題点を吸い上げた。有識者からは「(体験などの)価格が安いのでは」と指摘があり、値付けや客単価の低さが課題に挙がった。
今回は10者からヒヤリングを行った。能楽協会や日本芸能実演家団体協議会、全国のお祭りを扱うオマツリジャパン、京都で生活文化を伝えるワックジャパンらが取り組みを紹介した。共通の課題は海外への情報発信や、多言語化対応など。観光情報を集めた一元的なWebサイト構築、オンライン決済の導入などの要請もあった。
2016年の費用別旅行消費額で「娯楽サービス費」は全体の3・0%(1136億円)。訪日外国人1人当たりで4725円と、十分な消費額とは言い難い。一方で伝統芸能の他にも、世界最大級の地下放水路「首都圏外郭放水路」や軍艦島など、潜在的な観光資源は多い。
これらを踏まえ、A.T.カーニーの日本法人会長の梅澤高明氏は「神社仏閣や軍事拠点などの『場所・資源』と、宿泊やアート展などの『機能・コンテンツ』をかけ合わせることが重要だ」と強調。旅行者が多く消費するためのインフラを整備し、客単価を上げるべきだと訴えた。
例えば、米・カルフォルニアのアルカトラズ島は1963年まで、軍事監獄・刑務所として使用。現在は一般開放し、イベントやツアーなどで、年間約170万人が訪問する観光地だと紹介した。このほか富裕層の取り込みや、外国人材の登用の必要性を提言した。
電子チケットに関しては、playground(プレイグラウンド、伊藤圭史代表)の河野貴裕執行役員が取り組みを紹介。同社の電子チケット発券システム「QuickTicket」は市場で急速に伸びている。専用アプリは不要で、既存の販売会社からのチケットを、LINEやfacebookなどで簡単に受け取れる。
ただ現在は各社ごとに規格を開発し、電子チケットの普及にブレーキがかかっている。
「電子チケット規格は統一されている方がいい」(河野氏)。不正転売の防止や、データ収集、インバウンド対応など、「流通のコントロール」と「流通性の向上」が本質的な課題と指摘。業界横断的に流通性が高く、データトラッキングに優れた電子チケットが必要だと話した。
観光庁は今後、12下旬にヒヤリングを1度行い、18年1月に論点を整理。その後提言の骨子を検討し、3月に取りまとめを行う。政府として必要な取り組みを、19年度の予算要求に反映させていく見通し。