直接消費に結びつける インスタグラムの活用法
2017年12月25日(月)
インスタグラムを活用した誘客に対する期待は高い。現地を訪れた観光客個人による口コミ効果を期待できるからだ。写真コンテストを実施するなど、知名度アップや需要喚起に利用する自治体が増加している。間接効果に留まらず、直接消費に結びつける方法はないか? 一歩踏み込んだインスタグラムの可能性を考える。
【謝 谷楓】
インスタグラムを利活用した写真コンテストを作成・管理できるオリジナルCMS(コンテンツ管理システム)“CAMPiN”を提供してきたテテマーチ(東京都品川区)。地域の観光スポットを周知する手段として、全国の観光協会などで重宝されてきた。
同社は現在、誘客や直接消費増を実現する方法の1つとして、投稿写真に付与される“位置情報”に着目している。同社執行役員の松重秀平氏は次のように話す。
「投稿写真にハッシュタグを付けるだけで、コンテストに参加できることが“CAMPiN”の特徴でした。観光客だけでなく地域住民を巻き込んだPR活動で、地域に赴くキッカケづくりとして活用してほしいという思いがありました。一方、周知だけでなく、誘客に肉薄する仕組みの必要性も感じていました。そこで目を付けたのが、写真に付与される“位置情報”だったのです」。
インスタグラムには、位置情報から写真を見つけられる「スポット」検索が備わっている。地名やスポット名を検索することで、その位置情報を持つ写真を探すことができる。同社では、“CAMPiN”によるキャンペーンサイトにgoogleマップを掲載。その上に、個々の投稿写真を配置することで、写真の撮影地を一目瞭然にした。
「写真をWebサイトに並べるだけでなく、その位置情報も直感的に分かるようにしました。魅力的な写真は共感を誘いますが、撮られた場所を知ることで、キャンペーンサイトは旅のデスティネーションを選択するガイドブックにもなり得るのです」。
写真は、地域の魅力を伝える手段としては有効だったが、撮影地そのものを知るには位置情報が欠かせない。インスタグラムの「スポット」検索はあくまで写真を探すための機能。同社は、マップ上に個々の投稿写真を配置することで、撮影地近隣の駐車場や飲食店など、旅行時に必要な現地情報も把握できるようにした。【図参照】
「写真と撮影地をマップに落とし込むだけでなく、具体的な住所を記載することも可能です。現在は個別カスタマイズでの対応となりますが、今後はデフォルトプランも用意していきたいと考えています」。
総務省の調べによると、インスタグラムの利用率は20と30歳代でそれぞれ30―45%ほど。20、30歳代女性は56・6%と42・7%で、30歳代女性の利用率はツイッターを上回っている。インスタグラムへの写真投稿は、原則スマートフォン端末用アプリからしかできないが、そのスマートフォンを経由しての消費額も決して低くない。スマートフォン経由での直接消費効果は年間約6・4兆円(推計)。国内旅行会社の販売総額(15年)と並ぶ規模感だ。そのうち、旅行・宿泊の占める割合は8%(約5千億円)ほどで、ファッションに次ぐ規模となっている。
「来訪者が写真を撮りたくなる環境をつくれば、費用対効果の高い地域PRを望めます。来訪者と地域住民を問わず、指定のハッシュタグを写真に付けるだけで、地域の魅力を発信することができるからです。テテマーチでは、インスタグラムに関するセミナーも開催しており、参加する事業者からアンケートを取るなど、地域の実情に適した事業展開をしてきました。事業者の方々同様、BtoCの視点に立ったうえで、マーケティング支援を行っているのです。行政の統計情報が示すように、インスタグラムやスマートフォンを経由した経済活動は拡大しており、旅行や宿泊との親和性が高いことも分かってきました。
ハッシュタグの次は、“位置情報”を活用して、来訪者と消費額増を目指すべきです」。