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「もてなし上手」~ホスピタリティによる創客~(84)本気で人を育てる想いがあれば、おもてなし行動は創造できる 決められたルールの中でも

2017年12月31日(日) 配信

「お荷物、こちらから降ろしておきますね」(画像はイメージ)

 長い出張の疲れが出て、飛行機内ではずっと寝ていました。大阪空港に到着したときに、「今日はこのままタクシーで自宅に帰ろう」と決めました。タクシー乗り場に向かうと、私の行き先の乗り場には、長い行列ができていました。近距離の別のエリアへ向かう乗り場では、タクシーがずっと停まったままです。

 寒い中、長く待ったあとにようやく私の順番が来ました。車に乗り込みしばらく目を閉じて休んだあと、ふと外の風景に目をやったときに気づきました。大手のタクシー会社ではありますが、窓ガラスにはクレジットカード使用不可のステッカーが貼られていました。近距離といっても30分近くは乗ります。出張中に現金をかなり使っていたのでちょっと心配になってしまいました。

 座席に持ち込んでいたキャリーバックを開けて財布を探しながら思ったのです。サービスを提供する企業側のルールで、そこに空車が止まっているのに寒い中で長時間待たなければならない仕組み。大阪空港は市内の北のはずれにあり、市内中心部までは小一時間掛かります。その空港でお客様を待つタクシーが、クレジットカードの使用ができないとは、本当に驚きです。

 ところが、乗ったタクシードライバーには感動させられました。高級ホテルですら体験できないような、おもてなし行動に出逢ったのです。料金を支払い降りる準備をしていると、ドライバーが外に出て後部座席の右のドアが開けたのです。そして「お荷物、こちらから降ろしておきますね」と周り込んで、キャリーバッグをおろしたあとに、誰もいなくなった客席に腰をかがめて忘れ物、落し物がないかを確認しているのです。

 ふつう、ドライバーがお客様に喜んでもらえるような行動を取りたいと強く願っても、業界や企業のルールがその実行を阻み、それに直面した多くのドライバーは、そこであきらめて挫け、いつしかお客様への想いも薄れてしまいがちです。

 しかし、このドライバーは負けていません。決められたルールの中でも、自分にできることでお客様を笑顔にする。その強い意志を感じて感動してしまいました。別れたあと、どうしてもその想いを伝えたくて、その会社にお礼の連絡を入れました。「うちのタクシーでしたか。書かれている車両番号を教えてもらえますか。わざわざありがとうございました」。しかし、ドライバーがどんな行動をして、わざわざ電話でお礼を言って来たのかは聞かれませんでした。残念です。

 企業は何に対してドライバーを褒め、他のドライバーに伝えるのでしょうか。おもてなし行動は、企業の姿勢が変わればたくさん創り出せるのです。

 

コラムニスト紹介

西川丈次氏

西川丈次(にしかわ・じょうじ)=8年間の旅行会社での勤務後、船井総合研究所に入社。観光ビジネスチームのリーダー・チーフ観光コンサルタントとして活躍。ホスピタリティをテーマとした講演、執筆、ブログ、メルマガは好評で多くのファンを持つ。20年間の観光コンサルタント業で養われた専門性と異業種の成功事例を融合させ、観光業界の新しい在り方とネットワークづくりを追求し、株式会社観光ビジネスコンサルタンツを起業。同社、代表取締役社長。

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