「提言!これからの日本観光」「公開(観光)」と「保全」を考える
2018年1月13日(土) 配信
最近国が示した観光“ビジョン”や、昨年策定された国の観光“アクションプラン”で観光資源の充実整備をはかるため未公開の文化財、文化的価値の高い国の所有する施設などを積極的に公開していくこととされている。文化庁では重要文化財の公開について従来求めていた公開期間、時間の規制などを見直し緩和するとのことである。ところで、名古屋では戦災で焼失した名古屋城本丸御殿の復元に取り組んでおり、今年完成の予定である。観光資源の乏しい名古屋でこの公開は画期的なことと期待されている。しかし、文化財「保全」のためとして疎開して保管されてきた障壁画(重要文化財)があるにも関わらず、模写を展示する予定だった。これに対し、実物の展示を求める声が強く、このほど前記の方針も受けて実物展示も一部実現することになった。しかし、保全重視からわずか数点のみで、公開期(時)間も限定されると聞く。
これでは折角の“ビジョン”の趣旨が充分生かされたとはいえない。
一方、世界遺産登録の「富士山」はその性格上、常に「公開」せざるを得ないが、観光客の急増で山の痛みが目立つようになり、入山制限が必要との意見も出てきた。富士山ではこのほど入山客の増加を抑制し、その収入を保全経費にあてることを考え、すでに入山料徴収の試行が始まっている。ここへ来て、「保全」への配慮が目立つようになってきたのは、観光資源のおかれた厳しい現状がそこにあるからと考えられる。しかし、このようないわば強制、規制で進めるのは「観光」面からは問題がある。
観光資源(文化財など)の「保全」を「観光(公開)」と両立させる工夫、さらに進んで「観光」が即「保全」に直結するような手法を考えること、そしてその対応は観光客の誰もが持っているはずの観光資源を大切に守りたいとする心に訴えて自発的に行われることが望ましい。以下、その私案を提案する。
あらたに公開する文化財、既公開(観光資源としても)で今後損耗の可能性の高いものを国、自治体などで全国的に調査して「懸念文化財(観光資源)」(仮称)などに指定する。一定様式の「指定標」でそれを明示、そのうえで全国的な「懸念資源保全キャンペーン」を展開するのである。また、その観光資源を守るために望ましい観光手法の提案、観光客からの保全寄付金募集を呼び掛け(期待額の明示などを統一基準で行う)募金に応じた人は“赤い羽根”のような記章をつけて観光する。つまり一部寺社で行われている参観料に代わる“志”納方式を制度化することになる。
「保全」の必要性を現実の観光資源を前に訴えれば多くの観光客の協力が得られよう。また、観光行動のひとつとして「保全」活動への自発的参加も呼び掛けたい。そして「観光は文化財の最高の活用方法」という意識を共有し、「保全」と「観光」が観光する心を介して直結することで「観光」行動を即資源「保全」行動としたい。
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