〈旬刊旅行新聞1月21日号コラム〉大阪の外客1000万人超え “パワフル大阪” 首都・東京を圧倒
2018年1月19日(金) 配信
2018年の訪日外国人客数(推計値)が前年比19・3%増の2869万1千人と過去最高を記録した。13年に1千万人を突破するまでの数年前は、2千万人、3千万人という規模は、未知の領域であったが、今や現実の世界となった。一方の出国日本人数は同4・5%増の1788万9300人と大きな伸び率ではないが、堅調に伸び、双方向の観光活性化に前進した。
そんななか、「17年に大阪を訪れた外国人観光客数が1千万人を超えた」と大阪観光局が発表した。これは関西圏を含め、日本全体にとても明るいニュースである。外国人観光客(インバウンド)は訪問国の首都に集中しがちであり、日本も東京を中心とした首都圏の一極集中から分散させることが大きな課題としてあった。
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同観光局は、大阪と東京を訪れた外国人観光客数を比較している。15年は大阪717万人、東京1028万人。16年は大阪940万人に対し、東京1159万人。そして、17年は大阪が1111万人で、東京は1326万人。
注目すべきは、日本へのインバウン上位4市場だ。1位の中国は大阪402万人、東京421万人。2位の韓国は大阪241万人、東京153万人。3位の台湾は大阪140万人、東京149万人、4位の香港は大阪74万人、東京73万人と近隣4市場の総数では大阪857万人、東京796万人と首都である東京を圧倒している。欧米など遠距離市場からの訪日観光客をみると、さすがに首都に分があるが、東京だけでなく、もう一つ大きな大阪という観光の核が存在することは心強い。
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大阪は「グルメシティ」として国内にとどまらず、広く世界にも知られている。街歩きをしながら、たこやきやお好み焼き、串カツなども気軽に楽しめる。また、日本における“笑い”の聖地でもあり、街中に笑顔と活気が溢れている。最近さらに人気を増しているユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)や、ツウが好む通天閣も大阪の魅力を重層的にする。
訪れる人に垣根なく気さくに話し掛け、寛容に受け入れる大阪独特の気質がある。人によって好みは分かれるかもしれないが、大阪で感じる人との距離感は、旅人にとって強く印象に残るものだ。私は大阪を訪れるたびに、この謎めいた、奥深い魅力にのめり込みつつある。
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大阪を訪れると、自分が今、“アジア”に立っていることを強烈に認識する。目に映る派手なネオン、耳に届く街角の会話や笑い声、鼻や舌を満たす美食の香りや味。どれもパワフルに五感を刺激する。アジアのどの都市にも引けを取らない魅惑に満ち溢れている。政府が推進する夜のエンターテインメント観光も十二分に満喫できる。
そして大阪の周辺には京都や神戸、滋賀、奈良、和歌山など個性豊かなエリアが凝縮されている。大阪を拠点にして観光しても、1週間から10日間ではとても味わい尽くせないほどの魅力を備えている。少し足を伸ばせば、岡山や広島、瀬戸内海も日帰り圏内だ。北陸・金沢への交通も至便である。
日本列島の観光地を俯瞰すると、南北の両極である沖縄と北海道は特徴的で、圧倒的な人気観光地として認知されている。日本全体の観光活性化に向けては、関西圏が首都圏を超える一大観光拠点に育つことが望ましい。
(編集長・増田 剛)