【特集 No.483】働き方改革の可能性 テレワークで地域活性化を
2018年2月9日(金) 配信
昨今、叫ばれる働き方改革。現在の仕事内容を見直すことで有給休暇取得率の向上や残業の圧縮を実現し、余暇時間を創出することは観光業界にとって歓迎すべきだろう。また、テレワークなど働く場所を変える改革は、ロングステイや移住など新たな需要を生み出せる可能性があり、地域活性化策の1つとして期待できる。地域や施設にはどんな工夫が求められているのか、新しいビジネスモデルと併せて紹介する。
【飯塚 小牧】
□働き方改革とテレワークの広がり
日本テレワーク協会は2000年に設立した(前身は1991年設立の日本サテライトオフィス協会)。企業や地方自治体などの団体257会員が所属する。「テレワーク」とは、ICT(情報通信技術)を活用し、場所と時間を自由に使った柔軟な働き方のことで、在宅勤務などがこれに含まれる。まさに働き方改革の代表選手だ。
広がりの背景について、事務局長の富樫美加氏は「日本では2000年代に高速インターネット回線やiPhoneの発売、アマゾンのクラウドサービスの開始などICT環境が整備され、利用コストが下がったことが考えられます」と振り返る。テレワークは災害時のBCP(事業継続計画)にも有用なため、11年の東日本大震災後も注目を集めた。
その後、政府の働き方改革への取り組みが大きな転換となる。第2次安倍内閣発足後から、世界最先端IT国家創造宣言や1億総活躍国民会議、テレワーク事業などが開始。「15年ごろから働き方改革に関して予算がつき始めました」。
働き方改革が必要な理由として、少子高齢化が進むことによる労働力不足や市場のグローバル化への対応などを挙げる。こうした課題を解決するには、育児や介護などで仕事を辞めた女性や、リタイア後の高齢者に社会復帰してもらい、労働力と既成概念に捉われないアイデアを市場に投入する必要がある。
しかし既存の働き方は、働き盛りの男性を想定しているため、こうした人材が働く環境が整っていない。そこで、場所や時間を選ばずに仕事ができる「テレワーク」の導入が、多様な人材や働き方の実現に寄与すると考える。
□働き方改革は地方にチャンス
他方、テレワークを始めとした多様な働き方は地域にとってもチャンスとなる。和歌山県・白浜町や徳島県・神山町、北海道・別海町などはサテライトオフィスの取り組みに力を入れる地域。サテライトオフィスとは、本社や支社以外の小さな拠点のこと。市町村が不動産物件を用意し、企業に貸し出す形態が多いという。場所を選ばず仕事ができ、柔軟な思考ができるIT企業などと親和性が高い。「白浜は核となる企業と同業種の企業に声を掛け、IT企業のコミュニティを作っています。豊かな自然や子育て環境が良いことなどのほか、ビジネス上のメリットを創出することが大切だからです」。
神山町はもともと企業誘致の観点ではなく、地域活性化のために地元のNPO法人がアーティストを呼び込む運動をしていたという。そこでできたクリエイティブなコミュニティに注目した企業が、社員に知的な刺激が得られるのではないかと考え集積した。「町も宿泊施設を整備したほか、移住した人の見学ツアーなどをNPOと共に取り組んできました。そのうち、若い人が定住してレストランを開くなど、〝住む町〟として魅力的になりました」。少子高齢化・人口減少が進むなか、移住者を呼び込むことは多くの自治体の課題。しかし、神山町のように成功するのは一握りだろう。…
※詳細は本紙1702号または2月15日以降日経テレコン21でお読みいただけます。