「まちがあって、人がいて、宿がある」 旅館澤の屋館主 澤功氏
2018年2月16日(金) 配信
東京都台東区谷中の「旅館澤の屋」館主の澤功氏はこのほど、総務省の2017年度ふるさとづくり大賞で総務大臣賞を受賞した。インバウンド対応の先駆者として、東京の下町・谷根千(谷中・根津・千駄木)エリアの「地域づくりのリーダーとしての活躍が、街ににぎわいを与えている」という点が高く評価された。
澤氏は1982年から外国人観光客を受け入れ始めた。2003年には政府の観光カリスマ(下町の外国人もてなしのカリスマ)、09年にはビジット・ジャパン大使にも任命されている。
「外国のお客様の多くは宿ではなく、『旅』が目的なので、街が一体となって受け入れることになります。旅のスタイルが滞在型のため、街と関わらないと宿は外国人を受け入れられない。『まちがあって、人がいて、宿がある』という考え方なのです」と語る。
これまで約90カ国、17万人の外国人旅行者が澤の屋を利用した。旅行者の統計を細かにとっているのも同館の特徴だ。さまざまな研究機関などと協力して分析を行い、公表してきた。
17年に澤の屋を利用した外国人は87%を占め、日本人は13%。この比率は長年変わっていない。国籍別では1位がフランス、2位が米国、3位がオーストラリア、4位が英国、5位がドイツ。政府が推進していく欧米豪からの誘客強化に向けて、多くのヒントがあるだろう。
「旅行中のどこにストレスを感じましたか?」では、「ストレスを感じなかった(ノー・ストレス)」という回答が一番多いという。「言葉の問題」などがすぐに頭に浮かぶが、このあたりの結果も興味深い。
澤の屋を宿泊する旅行者の多くは日本に2~3週間滞在するが、澤の屋のほかにどのような宿泊施設を利用しているかも尋ねている。回答には「民泊施設」も多くあり、「宿との関係や影響も見えてくるかもしれない」と澤氏は話す。館内には大きな日本地図とパンフレットコーナーも設置している。「旅の前にあまり詳しく調べずに、日本に来てから行き先を決める旅行者も多いですね」と笑顔で語る。