〝停滞気味〟と課題、観光協会との連携がカギ 日本風景街道
2018年2月20日(火) 配信
国土交通省は2月19日、第2回「日本風景街道」有識者懇談会を開いた。これまで無電柱化の街並み整備や、イベントによる地域活性化、ツアー企画で観光振興などをはかってきた。日本風景街道の取り組みが始まり10年以上が経つ。現在は全国141ルートに増えたが、活動は停滞気味と課題がみえてきた。昨今の観光産業の好調さを踏まえ、各地域の観光協会などとの連携が求められる。
日本風景街道は「美しい国土景観の形成」「地域活性化」「観光振興」の3つの柱で、〝道〟を舞台に風景や自然、歴史、文化などを生かした活動を行っている。ただ課題は多い。案内看板の設置やビューポイントの整備などのハード面の動きはほとんどが限定的。「案内看板設置を国主導ではできないのか」「民間主導の協議会だけの力では難しい」など、調査では資金面で課題があるとの声も上がってきた。
観光振興の動きも鈍い。日本風景街道の活動団体の約7割は、観光協会との連携実績が無く、観光施策は十分とはいえない。多言語化やインバウンド対応も実施してきたのは少数だ。
さらに現在の組織の成熟度について「活動が停滞し今後の方向性が不明確な段階」が17%。人材不足などによる「活動を今後減らす」という回答は15%となった。活動意識の低下や、人材不足などの厳しい現状が垣間見える。
一方で、2007年度に提言をとりまとめて以降の社会動向は大きく変わった。近年は「無電柱化推進法(16年12月施行)」で道路上の設置抑制や、既存の電柱・電線の撤去を推進。街並みや景観の整備は加速している。「自転車活用推進法(18年5月施行)」により、サイクルツーリズムも人気を集めている。訪日外国人旅行者は17年で2869万人を超え、大きく増加している。取り込める余地は少なくない。事務局は「多方面の法制度の充実や機運の高まりがある」と捉える。
同日の会議で筑波大学特命教授の石田東生氏(座長)は「これまでは街づくりの面が強かった。昨今は観光ブームで、徐々に観光協会との関係性が強くなっている」と現状を分析。「独自路線を歩んでいる団体が多い。ただ連携がないと活動の広がりが見込めない。観光産業などとの連携が重要なのではないか」と同省の石川雄一道路局長も同様の考えを示した。
旺盛なインバウンド需要も、FIT(個人旅行)化しており、地方部へ流れている。とくに日本の自然は人気だ。今後は日本風景街道組織の独自の動きではなく、観光振興との連携が課題解決のカギとなりそうだ。
なお、次回は4月下旬を予定。これまでの議論を踏まえ、具体的な取り組みを議論。とりまとめは今夏に行う見通し。