【霧島PR課の取り組み紹介】オウンドメディアの創出 自発的な情報発信をサポート
2018年2月20日(火) 配信
費用負担を低減し、スピード感あるPRを実行するために。霧島市(鹿児島県)では、〝キリシマイスター〟認定制度や、〝キリシマイチャンネル〟など、住民による自発的な情報発信のサポートに力を入れている。主体はあくまで住民の一人ひとり。市はそのために必要なメディアづくりに専念するべきという考え方だ。アナログとデジタルを問わず、オウンドメディアの創出に力を入れる霧島市商工観光部霧島PR課の取り組みに着目した。
【謝 谷楓】
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「もちろん、PR動画は地域を知ってもらうためには大切なツールです。一方、どうしても再生回数を求めてしまう傾向が強いことも否定できません。拡散も大切ですが、再生回数が多いというだけで観光客や移住者が増えるとは限りません。面白いといって、消費されて終わりだけではいけないはずです」と、霧島市(鹿児島県)で長年広報に携わってきた美坂雅俊氏は力を込める。広報に従事してきた美坂氏にとって、情報発信の大切さは重々承知のこと。それでも「面白いといって、消費されて終わりだけではいけない」と語るのには理由がある。
「市の広報誌〝広報きりしま〟の制作に長年携わってきました。読者からのお便りを掲載するスペースがあるのですが、市民の投稿が、子育てや認知症患者を支援する仕組みが整うきっかけとなったのです。広報誌は、住民の思いを実現する役割をも担うメディアなのだと気が付き、その成果をもっと広げるためにはどうすればよいのかと考えるに至りました。広報誌やPR動画といったオウンドメディアの役割を、情報拡散に限定することはとてももったいないことです」。
地域の良さを再発見し、もっと好きになってもらう。霧島市のファンを作るためのツールとして、オウンドメディアを活用することが必要だという。
「市では2016年から〝キリシマイスター〟認定制度を設けました。自慢したくなる施設や場所、人など、自分のお気に入りを称賛し、〝マイスター〟に認定するというとてもシンプルな仕組みとなっています。市内のお店の店主らが〝マイスター〟として認定されることもあります。市では名前や施設名を記入できるキリシマイスター認定カードを発行し、思いをカタチにする手伝いをしています」。
認定カードは切手を貼ればハガキにもなる。〝マイスター〟に認定された施設や人は、受け取ったカードを掲示することで活動や商いの周知を期待できる。
「認定カードはキッカケづくりの道具に過ぎません。ここのお店が美味しいや、この施設の取り組みがユニークというように、良い面を市民自らに発信してもらうことが真の目的なのです。フェイスブックやツイッター、インスタグラムといった、SNS(交流サイト)上でも行ってほしいと考えています。関わる一人ひとりが共感し、感動できる地域へと霧島市を磨き上げることが重要です。閲覧やクリック数といった情報の拡散を求めるだけでは得られない成果だと捉えています」。
〝キリシマイスター〟は市民を対象とした取り組みだが、自慢したいという思いや対象があれば観光客でも構わない。霧島市で働き頑張る人や店舗、施設を褒め、発信したいという人が多くなればなるほど、市の魅力は高まるからだ。
「究極の目標は、行政がPR施策を行わなくても良くなることです。約12万人の市民一人ひとりが、霧島市の良さを発信するのだという意識を持てば、効果は絶大です。PRに掛かる予算の削減や、実行までのスピードアップも期待できます。個々人による口コミ情報は信頼性が高いとも言われていますから、観光客や移住者誘致にも力を発揮していくと考えています」。
霧島市を訪れる観光客数は年間約700万人。近年増加傾向が続く。昨年12月には「日当山西郷どん村」をオープンした。NHK大河ドラマ「西郷どん」を通じた来訪者の取り込みにも積極的だ。
「大河ドラマや2020年に開催予定の国民体育大会(国体)による来訪者をターゲットとしたリピーターづくりに活用してほしいですね。昨年12月には、〝ソーシャル日記システム(Social Nikki System)〟をスタートさせました。認定カードを日記帳に変えた取り組みで、日記帳は全部で1600冊(1冊79頁)。市の人口分だけ頁を用意しました。誰もが参加ができる交換日記とすることで、市民同士のコミュニケーションと〝キリシマイスター〟認定制度の浸透をはかります」。
今年2月には、インスタグラム上で〝キリシマイチャンネル〟を立ち上げ、市民参加型の情報発信を実現した。カードや日記帳、SNSというようにアナログからデジタルまで、さまざまな媒体を取り入れることで、幅広い年齢層の参加を促す。
「次世代を担う子供たちが、市の魅力を発見・発信できる取り組みにも注力しています。昨年9月には、市の小学生が熊本市内で霧島市をPRするチラシを配布しました。総合学習や修学旅行の一環でしたが、自身らの興味関心に基づき調べた市の情報をまとめ配布することで、市外からの関心と地元愛双方を高められたと考えています。近隣地域からの移住や、成人後のUターン増にもつながる取り組みです。地道ですが、一歩一歩着実に進めて行きます」。